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児童養護施設の子 スマホ持つにもハードル…持つリスクへの対応も難しく
今や中高生の生活にも欠かせなくなったスマートフォンだが、児童養護施設で暮らす子どもにとっては、利用にハードルがあることが少なくない。費用負担や活用方法について各施設も悩みながら対応しており、無料の貸し出し事業でサポートする動きもある。(粂文野)
授業・部活に必要 費用が難題
「遊びに行く約束はしないようにしていた」。千葉県内の児童養護施設で生活する高校1年の男子生徒(15)は、振り返る。
中学時代、友達はみんな自分用のスマホを持っていた。だが施設では、費用の支払いや契約で親を頼れる場合をのぞき、高校生になって自分のお金で持つルール。持っていない自分だけ連絡が取りづらいため、誘われるたび、「用事がある」と断った。
今春入学した高校でも、授業中に調べもので使う許可が出たり、部活の急な連絡がLINE(ライン)のグループで来たり、スマホは、“持っていて当たり前”だった。男子生徒は部活に入る希望があり、アルバイトをしてスマホ代を払うこともすぐにできない。
NPOが無料貸与
そこで施設が紹介したのが、NPO法人「スマホ里親ドットネット」(千葉市、櫛田啓代表理事)だった。この団体では、2020年から、児童養護施設や自立援助ホームなど社会的養護のもとで暮らす高校生らを対象に、寄付金などで契約した端末を無料で貸し出している。施設の高校生のスマホ所持率が低いのは、費用の負担が一つの壁になっているためだ。
全国の施設から問い合わせがあり、延べ42人が利用してきた。男子生徒も4月に同法人から端末を借り、無事、高校生活を送る。
内閣府の昨年度の調査では、スマホは一般の高校生の97・3%、中学生の86・6%が利用する。京都府内の児童養護施設の施設長も務める櫛田代表理事は「スマホは今の子の必需品。施設でも高校生が持つようになってきたが、アルバイトをして費用を負担するところが多い。部活や勉強などを諦めなくてもよい選択肢を用意したい」と話す。
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