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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ、エムポックス、麻疹…感染症の発生動向は分かりやすく国民に示して

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 新型コロナウイルスが、感染症法上の分類で「5類」に移行し、「全数把握」から「定点把握」になりましたが、それでも全体的な動向は「まあまあ」把握できています。保険診療扱いになって多くの人たちは「軽い症状くらいで検査は受けたくない」になりましたし、仮に全数把握のままであっても「正確な感染者数」は分からないのです。動向がゆるく把握できれば目的には合致しているわけで、あまりマンパワーを使いすぎないのは賢明な選択です。これでよかったのではないでしょうか。

新型コロナ、エムポックス、麻疹…感染症の発生動向は分かりやすく国民に示して
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」(厚生労働省)より
https://www.mhlw.go.jp/content/001100720.pdf

厚労省、感染研、新聞報道を見比べると…

 現在、ちょっと困っているのは他の感染症の動向です。例えば、サル痘、もといエムポックス。この感染症は世界的には流行が収まり、世界保健機関(WHO)も「公衆衛生上の緊急事態」を終了しました。

新型コロナ、エムポックス、麻疹…感染症の発生動向は分かりやすく国民に示して
「Our World in Data」より
https://ourworldindata.org/monkeypox

 厚生労働省のウェブサイトを見ても、グラフでは患者が減っているような感じに描かれています。「あれ? 日本でも流行が収まったかな」と感じさせます。しかし、日本では新規感染者が繰り返し報告され、流行が収まったとは言えません。

新型コロナ、エムポックス、麻疹…感染症の発生動向は分かりやすく国民に示して
「エムポックスについて」(厚生労働省)より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html

 5月27日の読売新聞の記事(新聞紙面では28日付)によると、エムポックスの発生は163人になったと報道されています。

「サル痘」からエムポックスに名称変更…国内で163人感染確認

 厚労省のデータよりも14人多く、減少傾向と思われていたエムポックスですが、実はそうでもないかもしれない、「むしろ増えている?」と考えさせられてしまいます。

 厚労省のサイト内にある「報道発表資料」を見ると、5月26日付で追加の14人が紹介されており、「これで163人になったんだな」とやっと理解できるわけです。

エムポックスの発生状況について(厚生労働省)

 分かりづらくないですか? というか、国民への情報提供をグラフ化して最新のものを示してくれればよいわけで、それとは別に「報道機関用」に発表するのは二度手間でしょう。そんな発表はしなくてよいから、(できれば自動的に)ホームページで最新の動向をアップデートしてくれればよいのです。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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