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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

コロナ「5類」移行1か月…条件付きの直接面会など平時へ一歩ずつ、犬の「文福」らは日常取り戻す

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コロナ「5類」移行1か月…条件付きの直接面会など平時へ一歩ずつ、犬の「文福」らは日常取り戻す

施設内まで入り、「文福」を散歩の迎えに行くボランティア。5類移行でコロナ禍以前の方法に戻った(「さくらの里山科」で)

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられてから、間もなく1か月になります。

 世間の人々は、多かれ少なかれ開放感を感じていることでしょう。私も個人的には、 閉塞(へいそく) 感が多少薄れたと思っています。しかしながら、私が経営している、ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、入居者の生活はあまり変わっていません。普通の生活を取り戻すために、やっと小さな一歩を踏み出したというところでしょうか。その小さな一歩が、大きな前進につながるものと期待しています。

 入居者の生活で変化した点は、何と言っても家族との面会方法です。コロナ禍の3年間、入居者は家族と直接会うことはできませんでした。「さくらの里山科」では、面会は窓越しか、オンラインのみとしていたのです。窓越し面会とは、入居者の家族は建物の外にいて、室内にいる入居者と窓越しに会い、携帯電話で話していただく、というものです。顔を見ながら話ができたので、ある程度は満足していただけたとは思いますが、触れ合うことも、手を握ることもできない窓越し面会では、絶対に埋めることができない寂しさもあったろうと思います。

 数年間、家族と直接会うことができないまま亡くなった入居者も大勢います。入居者が逝去される直前は、家族が居室に入って付き添うことを特例として認めていましたが、その段階では入居者は意識がない状態である場合が多いのです。ですから、入居者の家族にとっては、きちんと会えないまま亡くなってしまったと感じられたことでしょう。

 「さくらの里山科」では、コロナが5類に移行したのを機に、今月から、面会方法を直接会う形に切り替えます。とはいっても、家族が自由に入居者の居室に入れるというわけではなく、大きなホールで、時間は1回15分、家族の人数は5人以下にそれぞれ制限し、完全予約制で行うというものです。少し不自由な形ですが、家族と入居者が直接会うことができます。家族からは喜びの声が既に上がっています。

 当施設がある神奈川県横須賀市には21の特別養護老人ホームがあります。そのほとんどが、同じような形で、直接会う面会に切り替えるようです。一つのホームだけは、時間制限も人数制限もなく、予約不要で、家族が自由に入居者の居室に入れる、完全に自由な面会にすると聞いています。

 私たちも自由な面会を早く復活させたいのですが、しばらくはコロナの感染状況を観察しなければいけないと考えています。今年1月前後に起きた「第8波」の際は、「さくらの里山科」では計23人の入居者が感染してしまい、そのうち4人の方が逝去されました。高齢者に対するコロナの感染力と致死率は非常に高いものだと思います。「5類」に変わっても、ウイルスの脅威が変わったわけではありません。入居者の命を守るためには、慎重にならざるを得ません。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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