知りたい!
医療・健康・介護のニュース・解説
双極性障害の診療指針 日本うつ病学会が12年ぶりに改訂…患者が身につけたい七つのポイント
日本うつ病学会は3月、そうとうつの状態があらわれる「双極性障害」について、診療指針を12年ぶりに大きく改訂しました。薬物療法に、病気への理解を深めて対処法を学ぶための支援(心理社会的支援)を加える重要性を指摘。全ての患者に伝える七つのポイントを示したのが特徴です。(加納昭彦)
そう、うつ繰り返す
双極性障害は、気分が高揚する「そう状態」と、落ち込む「うつ状態」を繰り返し、生活に支障が出てしまう脳の病気です。
具体的には、そう状態では眠らなくても大丈夫になるなどし、うつ状態では気分の落ち込みが続くなどの状態になります。こうした特徴から、以前はそううつ病と呼ばれていました。およそ100人に1人がかかるとされます。男女差はありません。
気分の落ち込みなどが続くうつ病と見分けがつきにくいのも特徴です。杏林大などの患者対象の調査では、65%が最初はうつ病と診断されていました。同大精神神経科教授の渡辺 衡一郎 さんは「自分の行動を振り返り、うつ状態になる前に活動的な時期があったり、気分の波があったりするのであれば、医師に伝えるとよいです。正しい診断につながります」と指摘します。
双極性障害の治療は、そうとうつの波を抑え、気分を安定した状態にするのが目標で、薬物療法と心理社会的支援が中心です。
今回改訂された指針で、薬物療法は、気分の波を小さくする働きがある気分安定薬と、脳内の興奮を抑える働きなどがある抗精神病薬の併用が推奨されました。近年の研究で、併用すると効果が高まることが明らかになったためです。
「規則正しい生活」
心理社会的支援に関しては、患者が普段心がけることを学ぶ心理教育の中で、最低限身につけるべき点を七つのポイントにまとめました。
その一つは「規則正しい生活習慣の維持」です。双極性障害は、徹夜をするなど生活リズムの乱れが病状の悪化の原因になります。睡眠や生活のリズムを整えることが重要です。
「病状悪化につながる要因の把握」も大切です。不眠や仕事の抱えすぎなど、症状が悪化する要因は人それぞれです。悪化を招くストレスが分かれば、対処がしやすくなります。
双極性障害の人が働き続けるための工夫を伝えるウェブメディア「双極はたらくラボ」の編集長で、自らも当事者の松浦秀俊さん(40)は「薬物療法とともに心理教育は大切です。どの医療機関でも受けられるようになれば患者のプラスになります」と語り、七つのポイントを歓迎します。
本来は、臨床心理士ら専門家が心理教育を時間をかけて行うことが有効とされます。ただ、公的医療保険が適用されず、診療時間も限られていることから、多くの患者は受けられていません。七つのポイントは医師が短時間でも伝えられる内容をまとめました。本格的な心理教育の保険適用を求める声もあります。
指針改訂に関わった一人、順天堂大精神科教授の加藤忠史さんは「七つのポイントは、再発のリスクを減らすためにも重要です。症状の改善に役立ててください」と話しています。
【関連記事】