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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

医療・健康・介護のコラム

大事な人ががんと診断されたらどう接する?…気持ちに寄りそい、支えるために必要なこと

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 医療の発達が進んだことで平均寿命は格段に伸びましたが、一方でがん(悪性新生物)という病気も珍しくはなくなっています。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は50%を超えるとも言われます。この連載の読者の周囲でも、家族や親族、友人、会社の同僚や先輩(後輩)ががんと診断された、現在治療の最中である、そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 家族や友人など親しい人、交わりがある人がそのような境遇にある時「どう声をかければいいか、どう接したらよいか」と悩まない人はいないでしょう。これは非常に大きな、悩ましい命題です。

当人を不安にさせたくない“優しい”家族

家族や友人ががんと診断されたら、どう接したらい?…やめたほうがいい「〇〇ががんに効く」

 がんという病名のイメージや周囲に与えるインパクトはどのようなものでしょう。

 診療を行っていると「お父さんは気が弱いから、何とか病名をにごしたままで(告げずに)治療を行ってくれないか」。ご高齢になった方のがんの告知について、本人の落胆を危惧するあまり(またそのような反応を見たくないのもあるのでしょう)、そんなふうに伝えてくるご家族は少なくありません。

 もちろん、病名を告げないケースはあります。病名を聞いて、心の整理をするまでの時間すら残されていない猶予がない状態、年齢や病気により認知機能の低下が見られていて情報伝達が難しい場合、デメリットやリスクの方が大きいと判断した場合などです。しかしそうでなければ、病名を本人に告げることは悪いことばかりではないのです。

「どういう目的でこの薬使っているの?」

 がん等の病気が進行すると、患者さんには痛みやけんたい感、息苦しさなど実に多種多様な症状が出現していきます。しかし、特に痛みに関しては、現在医療用の麻薬等を駆使すれば完璧とは言わないまでも、かなりコントロールができるほど、薬剤や機器の発展、技術やケア方法の蓄積は進んでいるのです。

 そんな有力な手段があるにもかかわらず、病名や病気の進行度合いを患者さんに十分に説明しておかないと、「どういう目的でこの薬使っているの?」と患者さんは当然疑問に感じるはずです。

 それを医療従事者や家族がごまかし続ける、というのも無理があるのは容易に想像できるのではないでしょうか。また、もう時間がほとんど残っていない……という時期になって何らかのハプニングで患者さん本人が病気の存在を確信してしまった場合、「何で教えてくれなかったのか、なぜ隠していたのか」という失望感や悲しみ、怒りが一時的にでも生じてしまうのは、考えたくないことですが十分にありえることなのです。

 一方、病名を告知することで、自らの症状について原因がわかり、 () に落ちて心の安定が得られることもあります(そこに至るまでの時間は個人差がありますが)。また、病気による体力の制限や自分の残された時間を冷静に把握することで、やり残しの仕事や趣味を継続したり、自分が本当に一緒に過ごしたい人、会いたい人との面会などを加味して計画をたてることもできます。家族に対し、具体的な財産の処分や家庭内の諸問題について、意思を伝達したりすることもできるでしょう。

「当人はどうしてほしいと考えるか」

 冒頭の問いにもどりますが、コミュニケーションにおいて「何をしてあげられるか」という“施し”の視点で、相手のことを一生懸命に考えることは多いのですが、「当人だったらどうしてほしいと考えるだろうか」という視点が抜け落ちてしまっていることが実はすごく多い気がしています。

 がんの病名告知についてもそうで、「病名を告げてほしくない」というご家族であっても、「自分だったら(病名を)黙っててほしいと思いますか? 当人もそう望まれると考えるでしょうか?」と質問すると、「いや、それは伝えてほしいんですけど」とお答えになる方がほとんどなのです。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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