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「志村けんさんにコロナをうつした」…「感染源」にされた女性、デマ投稿26人を提訴
コメディアンの志村けんさんにコロナをうつした――。ネットで<感染源>とのデマを流された女性が、名誉を
向けられる敵意
大阪・北新地の「クラブ藤崎」でママを務める藤崎まり子さん。志村さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった2020年3月、ネットに「2月末に東京・銀座で志村さんの誕生日パーティーが開かれ、参加した藤崎ママが感染させた」との内容の書き込みが相次いだ。
藤崎さんはコロナに感染しておらず、志村さんと会ったことすらなかったが、このデマはネットの掲示板やSNSで一気に拡散した。「クラブ藤崎のママ 無自覚でコロナばらまいてる」……。藤崎さんのインスタグラムのアカウントには、「人殺し」「お前を許さない」などと罵倒するメッセージが殺到。多いときには1日数百件に上った。
藤崎さんはインスタグラムで「志村さんとは面識がない」と説明したが、敵意むき出しの書き込みは収まらず、「襲われるかもしれない」と一時期は外出も控え、警察にも相談。「精神的に追い詰められ、おかしくなりそうだった」と振り返る。
面識ない投稿者
藤崎さんは20年5月以降、デマを書き込んだ投稿者の氏名や住所を知るため、開示を求めて裁判手続きなどを進めた。最初にデマを発信した人が誰かははっきりしないままだが、拡散させる行為にも責任があるとして、開示された約40人のうち、示談に応じなかった26人について、今月13日付で提訴した。
26人の居住地は東京や愛知、大阪など13都府県で、面識のある相手はいなかった。1人あたり慰謝料や調査費用など116万~250万円を請求する。
藤崎さんは今でも店の客から「志村さんに感染させたのか」と尋ねられることがある。ネット上に誤った情報が一度拡散すると、いくら否定しても、正しい情報が伝わりにくい状況に、もどかしさを感じている。
投稿者の特定や示談交渉、提訴準備で1000万円以上かかった。訴訟を闘うには、さらに手間と時間がかかる。それでも提訴に踏み切ったのには理由がある。
「ネットに匿名で書き込んだつもりでも、特定でき、決して匿名ではないと知ってほしい。私が訴訟を起こして立ち上がることで、根拠のない情報を基に誰かを傷つける行為が少しでも減れば」と願っている。
相談は10年前の4倍以上、侮辱罪に懲役刑を導入
SNSの普及で、ネット上の
総務省の「違法・有害情報相談センター」には2021年度、6329件の相談が寄せられ、10年前に比べて4倍以上に増えた。テレビ番組に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が20年にSNSで中傷された末に亡くなり、社会問題となった。
政府は対策として、22年7月、侮辱罪に懲役刑を導入して厳罰化。同10月には迅速に投稿者を特定できるよう、プロバイダー責任制限法が改正された。従来は発信者の開示には、SNS運営会社とネット接続業者に対し、別々に裁判を起こす必要があったが、1回で済むよう簡略化された。
IT企業でつくる一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)は誹謗中傷の相談を受け付け、昨年1年間に861件の削除をサイトやSNSの運営者に要請。67%にあたる573件が削除された。
発信者情報の開示や損害賠償請求には証拠の保全が不可欠で、協会は投稿のスクリーンショットや投稿日時、URLを記録するように勧めている。
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