藤原るか「ヘルパーは見た! 在宅介護ペット事件簿」
医療・健康・介護のコラム
夫は不倫、命がけで産んだ子どもには敬遠され…孤独な難病の女性に寄りそう忠犬ジュリー
若い女性に多い病気
「全身性エリテマトーデス」(SLE)という病名を聞いたことがありますか? 免疫系が自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう 膠原 病の一種で、発熱、だるさ、筋肉痛・関節痛、皮膚の発疹や脱毛など、体のあちこちに症状が表れる原因不明の難病です。患者の9割が女性で、20~40代の比較的若い人が発症することが多いのが特徴です。
当時40代前半だった慶子さんは、この病気を患っていました。今から20年以上前、まだ介護保険制度も障害者総合支援法もなく、介護が必要な人に市区町村がヘルパーを派遣していた時代のこと。私は都内のある区の公務員ヘルパーとして、慶子さんのお宅を訪問していたのです。
動けない飼い主を介助
広いお屋敷の一番奥、中庭に面した一室で慶子さんは過ごしていました。私たちヘルパーは、玄関を通らずに中庭から慶子さんの部屋を訪問する決まり。縁側から室内に上がると、メスのシェットランドシープドッグのジュリーが飛びついてきます。
ジュリーは、中高年の皆さんならご存じの「名犬ラッシー」をそのまま小さくしたような姿です。人なつこい性格で、毎日、入れ代わり立ち代わりやってくるヘルパーにほえかかることもなく、尻尾を振って歓迎してくれます。
驚くべきは、その賢さと忠実さ。慶子さんが「ジュリー、新聞とってきて」と声をかけると、勢いよく部屋を飛び出し、新聞をくわえてベッドサイドへ。タオルやティッシュの箱なども、慶子さんの指示に従って運びます。まるで介助犬のようですが、特に訓練を受けたわけではなく、いつの間にかやるようになったのだとか。
まん丸な瞳に聡明そうな光をたたえ、人の声に耳を傾ける姿は、この家の中のことも、慶子さんの気持ちも、すべて承知していると言いたげでした。
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