ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
引き離された夫婦が再び一緒に過ごした最期の1か月…誕生日を祝い合い取り戻した夫婦の絆

一緒の時間を取り戻した木下さん夫婦(「さくらの里山科」で)
コロナ禍の3年間、特別養護老人ホームの多くが、入居者と家族の面会を厳しく制限していました。ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」も同様です。直接会える対面式の面会は中止とし、施設の窓越し面会かオンライン面会のみとしています。しかも月に1回、完全予約制です。
そのような状況のせいで、家族と会うことができないまま亡くなった方が、全国の特別養護老人ホームにはたくさんいたことでしょう。木下さんご夫妻(仮名)も危うくそうなるところでした。
夫の木下隆さん(仮名、80歳代)が「さくらの里山科」に入居されたのは、昨年10月のことでした。ほとんど寝たきりの状態になり、自宅で生活することが難しくなったためです。隆さんの入居で、それまで一緒に暮らしていたご夫婦は、会うことすらままならなくなってしまいました。しかし、幸いなことに、会えない期間はそれほど長くはなりませんでした。
今年3月の初め、妻の孝子さん(仮名、80歳代)も、ここに入居されたのです。ただし、夫とは異なるユニット(区画)でした。隆さんが暮らすユニットに入居枠の空きがなかったためですが、犬に関する希望の違いもありました。大の犬好きだった隆さんは、犬と暮らせる2階のユニットを希望。それほど好きではなかった孝子さんはこだわりがなかったので、4階のユニットへの入居となりました。それでも、ご夫婦は再び同じ屋根の下で暮らすことができたのです。
隆さんは自分では移動できない状態でしたので、孝子さんが隆さんのユニットを頻繁に訪れていました。そうすることで、夫婦が一緒に過ごす時間を持っていました。
孝子さんは入居早々に誕生日を迎えました。その時ばかりは、職員が介助して、隆さんを孝子さんのユニットにお連れし、妻の誕生日を2人で過ごすことができたのです。孝子さんの部屋の飾りを家族が作って届けてくださり、ささやかな、とてもすてきなバースデーパーティーを開催しました。
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