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大川智彦「先手を打って、病に克つ」

医療・健康・介護のコラム

50代で腎臓がんを早期発見できた女性 「寡黙な臓器」の異常に気付くサインは?…喫煙、肥満、高血圧はリスクに

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 健康な人の場合、腎臓の存在を意識することは少ないかもしれません。血液から老廃物や余分な水分、塩分などをろ過、尿として排出し、体内の水分量やナトリウム、カリウムなどの調節をしてくれる大切な働きをしています。胃や腸、食道などは、食事や排せつと密接に関係しているので、ちょっとした不調でもサインを出してくれることがありますが、腎臓は肝臓やすい臓と同様に、比較的、寡黙な臓器です。

 ここにがんが発症しても、初期はほとんど自覚症状が出ません。小さいうちに発見される腎臓がんは、健康診断やほかの病気の検査などで偶然見つかることが多いのです。とはいえ、進行するにつれ、体が「声を上げる」ことがあります。血尿、背中や腰の痛み、腹部の「しこり(腫瘤)」などがそれにあたります。症状の出にくい厄介ながんを、少しでも早く発見するためには、体が伝えてくれるちょっとしたサインを見逃さないことが何よりも大切です。

エコー検査に映った意外な腫瘍

50代女性の腎臓がんが早期発見できた理由は、「反対側の脇腹」が発したサイン

 埼玉県在住のA・Mさん(64)はある大学病院の事務職員として元気に働いている独身の女性です。36歳のとき、子宮けいがんの手術(単純子宮全摘出術)を受けた経験があります。さらに、良性の卵巣腫瘍もあり、長く経過観察を続けてきましたが、55歳になったころに大きくなってきたため、開腹手術による摘出術を受けています。

 職場が医療機関であるため、健康に対する意識を持ち、40歳を過ぎてからは職員健診だけはきちんと毎年受けてこられました。若いころはスレンダーな体形だったそうですが、加齢に伴って体重は増え、現在は身長1メートル55センチ、体重65キロ(BMI:27)とWHO(世界保健機関)が定める肥満度判定基準では「過体重」となり、「肥満」の少し手前といったところでしょうか。

 そんなA・Mさんが57歳になった2016年6月、右脇腹に軽い痛みのような違和感を覚えたそうです。この部位部分の軽い異常なら、多くの人が経験していると思います。スポーツの後やちょっと不自然な姿勢が続くことで、比較的、違和感や痛みが出やすい場所です。ほとんどの場合は自然に治るので、あまり深刻に考えないケースが多いようです。

 A・Mさんもさほど気にすることもなく、「そのうちに治るでしょ」と放置していました。ところが、2、3週間たってもなかなか症状が治まらないため、少し心配になり、ご自分が勤務する病院の消化器内科を受診しました。血液検査、胃内視鏡検査が行われ、慢性胃炎と脂質異常症を指摘され、薬が2週間分処方されました。

 たいしたことはなさそうなので、少し安心して、薬を飲み続けた結果、痛みは軽くなったものの、軽い違和感はなかなか消えてくれませんでした。次回の診察で、医師にそれを伝えたら、今度は腹部超音波(エコー)検査となりました。

 結果は意外なものでした。ずっと違和感があった右の脇腹ではなく、反対側の左の腎臓に腫瘍が見つかったのです。痛みの伝わり方によって、まったく別の部位に痛みが出る症例はまれにあるのですが、やっぱり人間の体は不思議ですよね。

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大川智彦(おおかわ・ともひこ)

 佐野メディカルセンター理事。1969年、名古屋市立大医学部卒。放射線腫瘍医として (がん) 研究会病院放射線科などで勤務し、英国留学後、94年、東京女子医大放射線科主任教授に就任。その後、徳洲会病院グループ放射線科部門長、東京西徳洲会病院副院長・検診センター長、佐野メディカルセンター予防医療センター長などを歴任し、2019年より現職。

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