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介護・シニア

認知症 さがし物が見つからず、「隠したんだろう」と家族を疑う80代の父…理由と解決策は

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 一緒に暮らす高齢の父が「物をとられた」と頻繁に言うようになり、どうしたらいいかわからない――。そんな内容のお便りが届きました。家族に認知症の症状が目立ち始めた時、多くの人は戸惑います。「接し方」のポイントを専門家に聞きました。(阿部明霞)

部屋でずっとさがし物

 お便りをくれた女性に連絡し、詳しい状況を教えてもらいました。

 80代の父親が最近、部屋の中でずっと何かをさがしているそうです。例えば、現金やキャッシュカード。どうやら、なくさないように自分で引き出しなどにしまって、その場所を忘れているようだ、とのこと。機嫌が悪いと、「お前が隠したんだろう」「困る姿を見て楽しんでいるのか?」と言われるそうです。

 「父には自宅で穏やかに、幸せに過ごしてほしいのですが……」と、女性はちょっと疲れている様子です。

思い込み 背景に不安

「物とられた」に怒らず叱らず…思い込み 背景に不安

 当事者や家族の支援に詳しい、高知県立大准教授で認知症介護研究・研修仙台センター特任研究員の矢吹知之さん(50)を訪ねました。

 矢吹さんは「実際には誰も物をとったり、隠したりしていないのに、認知症の症状で『盗まれた』と思い込んでしまうことがある」と言います。

 「記憶」の仕組みから説明してもらいました。

 ふだん、私たちは意識していませんが、記憶は、〈1〉目や耳などでキャッチした「見た物」「聞いた音」といった情報を脳が受け取る〈2〉脳内にその情報を保管しておく〈3〉必要な時に呼び出す――という3段階で成り立っています。

 しかし、情報をしっかり保管できていなかったり、引き出せなくなったりすると、記憶をうまく活用できません。

 一般的に、認知症の「もの忘れ」では、新しいことを覚えるのが難しくなります。引き出せる記憶がなければ、少し前に目の前で起きた出来事でも、その人にとっては「なかったこと」と同じです。

 お便りのように、いつもさがし物をしているケースについて、矢吹さんは「物がそこにあった記憶はあるが、それを自分で『しまった』『消費した』『捨てた』ことなどは覚えていない、という状況が起きている」と説明します。

 「ここにあったはず」の財布や預金通帳、カギが突然、目の前から消えたら、誰でもあわてるはずです。さがし続ける物は、「その人にとって」大切な物や愛着がある物であることも多いそうです。

 しかし、「忘れている」と自覚することは難しいといいます。「自分にとって大切な物がなくなった」ことが度重なると、身近にいる家族を疑ったり、怒ったりという行動に結びつきやすいそうです。

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