わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
生まれつき鼻と口に変形がある私 「表に出ては駄目」から「隠れなくていいんだ」に変わった理由
「見た目問題」を一人芝居で訴える…河除静香さん(48)
あざや脱毛症、やけどなど、外見を理由とした差別や偏見を「見た目問題」と言います。この問題を多くの人に知ってもらいたくて、イベントや学校で、自分の経験をもとにした自作の一人芝居を演じています。
生まれつき、顔の一部が変形している顔面動静脈奇形という病気です。子供の頃は、同級生から心ない言葉を浴びせられたり、フォークダンスで手をつないでもらえなかったりしたこともありました。就職活動では「あなたの見た目では採用できない」と言われました。
結婚と出産を経て、図書館司書として働いていた15年ほど前、見た目問題の当事者が集うイベントを知りました。顔にあざがある人や皮膚の色が白くなる「白斑」がある人など、様々な人が参加していました。それぞれが差別を受けた経験を語る中、私も心の内をさらけ出すことができました。
当事者同士で話すことで心が楽になり、「明日からも頑張ろう」と前向きになれると感じ、2011年から富山県で交流会を始めました。参加者が笑顔で帰る姿を見ると、やってよかったと心から思います。
当事者以外の人にも関心を持ってもらう方法として、14年から自身の経験を基にした一人芝居を始めました。初めて披露した後、「格好良かった」と声を掛けてもらいました。心のどこかで「表に出ては駄目なんだ」という気持ちがありましたが、スポットライトを浴び、堂々とマスクを取った自分の顔を見せることで「陰に隠れなくていいんだ」と思えるようになりました。
1回だけのつもりでしたが、演じる楽しさに魅了され、作品を作り続けています。問題を当事者以外の人に知ってもらうことにも、演劇は有効だと考えています。感情を込めたセリフで伝えると、自分事として感じてもらえるからです。
昨秋、3年ぶりに新作を発表しました。自身の半生を紹介するドキュメンタリー番組に寄せられた約4000件のコメントが題材です。好意的な声や否定的な声だけでなく、「見た目の違いを特別視しない世の中になってほしい」といった真剣に考えてくれたことがわかる意見もありました。
そこで、コメントへの返信のつもりで作品を作りました。寄せられたコメントを流し、主人公が感想を話すという内容です。お互いの思いをやり取りすることが偏見をなくすことにつながると思っています。
外見だけでなく、性格や考え方などそれぞれの違いを自然に認め合える社会にしていきたいです。(聞き手・沼尻知子)
かわよけ・しずか 1975年、富山県生まれ。先天性の疾患の「顔面動静脈奇形」で、生まれつき鼻と口に変形がある。「見た目問題」の当事者として、2014年から一人芝居で差別の解消などを訴える活動をしている。
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