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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Final Track】精神科医の私が経験した「ココロブルー」――うつ病寸前で行ったこと、支えてくれた存在――

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 私は、これまで多くのうつ病患者さんを治療してきました。しかし、医師の私が思うように治療が進まなかったケースはたくさんあります。精神科医になり30年以上たった今でも、自分の力量が足りないと思うことや、私が施してきた治療の効果以上に、患者さん自身の回復力や様々な幸運に助けられたことは少なくありません。そして、私自身にも「ココロブルー」に陥った時期があり、「うつ病」の入り口にいたことがあります。この経験が、現在、多忙で心の健康を損いそうな人の参考になればと思います。

多忙な日々に新しいプロジェクトが加わり

【Final Track】精神科医の私が経験した「ココロブルー」――うつ病寸前で行ったこと、支えてくれた存在――

 私は、37歳の頃から勤め始めた総合病院で精神科外来の設置に関わり、多くの患者さんが訪れる外来診療に没頭していました。地域の基幹病院のため夜間休日の救急も多忙で、私も月に数回は内科系の救急対応に就きました。朝から夕方まで精神科の外来診療、夕方からは他科に入院中の方の不眠や心の問題を診療し、日によってはそのまま救急当直に入ることもあり、ほぼ寝ないまま翌日の勤務が始まるような日常でした。

 そんな生活が3年続いた頃、所属する病院の母体である法人から、公的研究のプロジェクトリーダーを任されました。自身の疲労やプロジェクトの重大さを考える間もないまま、通常の業務に研究の時間が加わりました。我ながら無防備だったと思います。ただ、前年の冬、私と妻の間に初めて授かった小さな命が、誕生とほぼ同時に失われたという出来事があり、喪失感に悲嘆していた時期でした。春が来たと同時に、団体の肝入りプロジェクトを任されることで、新しい喜びへの期待感があったことを記憶しています。

 研究の狙いは、働く人の「うつ」という現象を客観的にとらえる指標の開発でした。それまでの問診やチェックリストによる指標とは異なり、脳や体の所見などが重要な要素となります。通常の診療の傍ら、様々な文献を読みあさりながら、脳の血流と「うつ」との相関関係を検証する研究に着手しました。

 ただし、医学的な研究だけでなく、倫理規定や個人情報保護について厳密な配慮をしながら、研究に協力いただく方への説明文書や同意書、調査票などの作成と管理なども一人で行うなど、膨大な作業に、日々忙殺されるようになりました。ジリ貧の自転車操業で、プロジェクトの担い手としては、事前にチームを組むような準備も必要だったと思います。

 さらに臨床現場では、精神科内でもう一人の医師の交代があり、診療や救急対応の担当配分をめぐって、新人医師の希望が私とかみ合わず、マネジメントの困難も初めて経験しました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

 2021年5月には、新型コロナの時代に伝えたいメッセージを込めた 「リンゴの赤」 をリリースした。

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