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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

入居者と愛犬が一緒にお花見…心はほっこり春色に

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入居者と愛犬が一緒にお花見…心はほっこり春色に

河津桜の下でミックと飼い主の瀬川さん(今年2月、「さくらの里山科」で)

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」の庭には、もちろん桜の木が植わっています。2月には早咲きの河津桜が、3月にはソメイヨシノが満開になります。入居者の皆さんは毎年、満開の桜を見るのをとても楽しみにしています。特に、犬と一緒に暮らせる2-1ユニット(区画)と2-2ユニットの皆さんは、桜が咲くのを待ち焦がれています。庭がドッグランになっていて、ユニットからはすぐに行ける構造になっているのです。だから、庭に出てお花見ができるのですよ。

  愛犬のミック (ヨークシャーテリア系のミックス犬、雄、11歳)と同伴入居した瀬川安江さん(仮名、90歳代)も、車いすの膝の上にミックを乗せて、お花見を楽しまれていました。ここに入居する以前の瀬川さんは、ミックと“2人暮らし”でした。認知症を患っていたため、火を使う器具は危なくて扱えず、エアコンのリモコンも壊してしまうので、真冬に火の気のない部屋でミックを抱きしめて凍えている状態でした。家族が老人ホームへの入居を勧めても、「ミックを置いてどこにも行かない」と、頑として拒んでいたのです。家族からの相談を受け、凍死の恐れがあると判断して、ミックと一緒に緊急入居していただいたのが5年前です。今では瀬川さんもミックも、冬は暖かく、夏は涼しい環境で、のびのびと暮らしています。ミックは大の「おばあちゃん子」で、瀬川さんといつも一緒。トイレにもついていきます。

 ミックは毎日、職員と一緒にドッグランに出ていますが、桜の下で大好きな瀬川さんと一緒にドッグランに行くのは、ひときわうれしそうです。

 6年前に 愛犬のココ (トイプードルの雄、12歳)と一緒に入居した橋本幸代さん(仮名、70歳代)は、骨折で入院した際に認知症が進行し、ココのことが認識できなくなってしまいました。名前を呼んでもらえなくても、なでてもらえなくても、何も応えてもらえなくても、ココは懸命に寄り添い続けました。その結果、奇跡的に橋本さんはココのことを思い出しました。認知症の症状が一時的にせよ劇的に改善したのです。それから5年間、症状は徐々に進行していますが、ココとの絆は失われていません。最近は、ほとんど無表情なままですが、満開の桜の下でココを抱きしめる橋本さんは、間違いなくうれしそうだったと職員は確信しています。

 飯田正子さん(仮名、90歳代)は、認知症が進行しても何とか自分一人なら生活ができていたのですが、 愛犬のサリー (シーズーの雌、13歳)の世話が適切にできなくなったため、同伴入居しました。ホームではサリーの世話は職員がしますので、飯田さんはすっかり安心しています。高齢ながらとっても元気なサリーが、桜の下をドタバタ走り回るのを、ほほ笑んで見つめていました。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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