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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

医療・健康・介護のコラム

性感染症の疑いがあるときに医者に伝えてほしいこと…梅毒患者が急増中

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 10代の男性が排尿時の違和感と尿のにごりを訴えて受診されました。心配したお母様も同伴されています。年齢や性別から性感染症を第一に考えましたが、本人は心当たりがないと話します。さて、次はどうしたらよいでしょうか?

梅毒の感染者が年間1万3000人

梅毒患者が急増中…性感染症の疑いがあるときに医者に伝えてほしいこと

 実は性感染症は私たちにとって身近な病気です。そのひとつである梅毒は、過去にない勢いで全国的に広がっています。具体的には2022年に国内で報告された感染者数は1万3000人ほど。深刻なのが東京都で、2016~2020年は1700人前後で推移していたようですが、2022年は3677人と急増し、現在の調査方法になってから最多の報告数とされています。

 ただ悪い話ばかりではなく、これまで国内での梅毒の治療は数週間にわたる飲み薬の治療がメインだったのが、長期間作用するペニシリンの注射製剤が近年、国内でも承認されました。このことで早期梅毒であれば1回の筋肉注射で治療が完結するということが実現するようにもなりました。

 梅毒の治療法がない時代には、水銀を使用したり、高熱を出した患者の梅毒が治癒することがある現象を受け、わざとマラリアに感染させたりといった、正に苦肉の策を行っていたこともあるようです。しかし、現在は抗生物質でほぼ完全に治る病気へとなりました。梅毒と同じ性感染症の中にはエイズウイルス(HIV)の感染症もありますが、こちらも医療の発達により劇的に予後はよくなっているのです。

患者の気持ちに配慮する必要

 先人たちのトライ・アンド・エラーの結実ともいえる感染症診療の進歩を無駄にせず適応していくためには、とにもかくにも、まずは“疑う”ことが起点になります。

 性感染症を疑うきっかけになるのは、やはり医師から患者さんへの問診(対話)がほとんどです。しかし、「きのう何を食べました?」という質問ならともかく、性生活について赤の他人から聞かれ、赤裸々に話すことは、多くの人にとっても抵抗があることだと思います。たとえ口頭での答えが「心当たりがない」であっても、本当のことを言えていない可能性もあるでしょう。

 性生活なんて正にプライベートの極地のような話で、そもそも心の準備ができていなかったり、むやみに答えたくなかったりする心理も理解できます。ドアが開けっ放しで医療スタッフの出入りが激しい診察室で聞かれたら答えられるでしょうか? 少し話すのをためらうかもしれませんし、本当のことを伝えられず脚色して話すかもしれません。

 「これからお答えいただいことは、ご本人の許可なく口外することは決して行いません」という声かけや、安全性やプライバシーが最大限に保たれた診察場所の用意など、医療機関側の配慮が必要になると思います。

 冒頭の若い男性は、本人しかいない状況で話を聞くと「実は……」と言って話を始めてくれたため、 (りん) 菌感染症の診断、治療に行き着きました(同時に他の性感染症のチェックも行い、幸い合併する疾病はありませんでした)。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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