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認知症の人が持つ「ヘルプカード」とはどんなもの?…作成する際に知っておきたい三つのポイント
認知症で、道に迷わないか、交通機関はスムーズに利用できるだろうかと心配になって、外出の機会が減るケースがあります。でも、周囲のちょっとした手助けで、不安は解消できるかもしれません。行きたい場所や手伝ってほしいことを書いた「ヘルプカード」を活用し、出かけてみませんか。(小沼聖実、長原和磨)
苦手な機械操作 頼みやすく
「操作がわからないので、教えてもらえますか」
静岡県藤枝市のドラッグストア。商品のバーコードを客自身が読み取らせて精算するセルフレジの前で、永井三彦さん(63)が首から下げた名刺大のカードを示し、店員に声をかけた。カードには「若年性認知症の本人です。手続きや機械の操作に時間がかかることがあります」と書かれている。
永井さんは電車で市外の友人宅やハローワークへ出かけたり、バスに乗って市役所や病院に行ったりする。買い物は自分でするが、ATMで現金を引き出したり、券売機を操作したりするのは苦手だ。困った時のために、この「ヘルプカード」と財布、スマートフォンの3点セットを目に付く机の上に置いておき、外出時は必ず持って行く。
永井さんがカードを作ったのは、ATMでの悔しい出来事がきっかけだ。よく行く郵便局が営業時間外で、コンビニのATMを利用した際、不慣れな操作画面に戸惑っていたら、後ろに並んだ人に舌打ちをされたという。
同じ頃、認知症当事者の集いで、こうしたカードを携帯して外出を楽しんでいる当事者に出会い、「自分も持ちたい」と同市の認知症地域支援推進員を務める横山麻衣さんに相談。一緒に作った。
「認知症の本人です」という文言は、永井さんの希望で入れることにした。周囲に手助けを求める時、自分が認知症であることをうまく説明できないかもしれない。「必要な時にだけ、カードを見せれば話が済むのが楽」といい、機械の操作時だけでなく、病院の受付など、活用の場面を広げている。
道に迷うこと気にせず散歩
「今、道に迷ってしまっています。ご協力していただけませんか?」。北海道千歳市の男性(83)は、こんな文言のカードを洋服のポケットに入れて出かける。毎日1時間のウォーキングを安心して続けるためだ。裏面に、名前や市の地域包括支援センターの連絡先なども書いてある。
3年半前にレビー小体型認知症と診断された。市役所からの帰りに、急にどこを歩いているのかわからなくなったことがある。その時は妻(77)が一緒で困らなかったが、「頭にもやがかかった感じ」で15分ほど歩いていたという。
男性は、同市の認知症地域支援推進員、作田直人さん(42)の提案で、妻も交えて話し合ってカードを作った。実際に提示したことはまだないが、「持っているだけで気持ちが違う。安心して歩ける」と男性は話す。
最近、「困っているので、協力してほしい」と伝えるための新しいカードも作った。男性の発案だった。
以前は、「帰れなくなって、誰かに迷惑をかけたら困る」と男性の外出に後ろ向きだった妻も、買い物を頼むようになった。2人で出かけた先で別々に行動することもある。
作田さんは「認知症の人も、いつも手助けが必要というわけではない。カードを持っておけば、本人も家族も安心だと思う」と話す。
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