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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

両親が離婚 学校でいじめに遭い不登校になった中2男子を救った先生…「僕が出会った大人の中で最高の大人」

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こんな先生がいいなあ…不登校の中2男子を見守った「僕が出会った最高の大人」

 1日の大半を学校で過ごす子どもたちにとって、学校の先生はとても大きな影響を与える存在だといえます。そこで、子どもたちがどのような先生を求めているのか、不登校の子どもを通して考えてみました。

 涼太君(仮名)は、両親と3人家族。お父さんとお母さんは、けんかばかりしていました。涼太君は、幼児期から多動で落ち着きがなく、保育園では他の園児とおもちゃの取り合いでもめていました。自宅では床や壁にクレヨンでお絵かきをしたり、床に水をまいたりして、お父さんにきつく叱られ、たたかれることもありました。

 小学校入学後は、授業中に立って歩き、時には教室から飛び出すこともありました。遊びの最中に同級生としばしばけんかにもなるなどで、学校の先生から繰り返し注意を受け、叱られてばかりいました。

 小学2年の時、不仲だった両親が離婚。涼太君はお母さんと2人で生活するようになりました。学年が上がるにつれて、落ち着きのなさは収まりましたが、今度は忘れ物が目立つようになりました。

 小学校高学年からは、教科書や筆入れを同級生に隠されたり、遊びの仲間に入れてもらえなかったりするいじめに遭い、学校を時々休むようになりました。

 中学校入学後、同じ小学校出身の子が大勢いるクラスに入りました。中学生になってからもいじめが続き、教室内で後ろから背中をいきなり押されたり、廊下ですれ違いざまに足をかけられたりしました。学校の先生にそのことを相談しましたが、一向に収まりません。それが元で、中学1年の2学期から学校を完全に休むようになりました。

 自宅ではゲームに没頭し、昼夜逆転の生活。思い通りにならないと、お母さんに暴言を吐いたり、壁をたたいて穴を開けたり……。そのため、中学1年の2月にお母さんと一緒に思春期外来を受診したのです。

先生と話をしている時が一番楽しかった

 初診時の涼太君はふてくされた態度を示し、主治医からの質問にも「別に」「普通」と短く答えるだけ。注意欠陥・多動性障害(ADHD)および不登校ということで、通院が始まりましたが、その後も登校することはできませんでした。そのため、中学2年の4月から、不登校の生徒を対象とする特別支援学級(相談学級)がある同じ市内の中学校に転校しました。通常の学級がある中学校の中に開設された、不登校の子どもたちだけの教室です。生徒の人数が10人以下の少人数で、教室には常に複数の先生がいて、勉強は生徒の理解度に合わせて個別に教えてもらうことができます。

 涼太君は、この学級にすぐになじんで登校できるようになりました。通院を始めて2か月後に思春期外来を受診した時には、「不登校学級は楽しい。だって、いじめてくる同級生が一人もいないんだよ。自分と同じようにいじめられて不登校になった子も多かった。仲間がいるのだと思えた」と明るい表情で話してくれました。

 その後も休まず登校し、無事、中学校を卒業、高校に入学することができました。

 高校入学後に再び思春期外来を受診した涼太君は、中学校時代を振り返って、こう話してくれました。

 「不登校学級では勉強以外にもいろいろなことを自由にさせてくれたのです。『体育館のマットの上で同級生とプロレスをしたい』と先生に言ったら、止められることはなく、先生はマットを2枚重ねて敷いてくれました。そして、『ケガだけはするなよ』と言って、先生がずっと見守ってくれました。今までの学校だと危ないからと止める先生ばかりだったのに、不登校学級の先生は違ったのです」

 さらに、「不登校学級の先生は僕の過去のことを根掘り葉掘り聞いてくることはありませんでした。僕は父親から体罰を受け、小中学校時代はいじめにも遭いました。でも不登校学級の先生は、そんな過去の嫌なことを聞いてくることはなく、今をどうやって楽しもうかということばかりを先生と相談しました。先生と話をしている時が一番楽しかったのです。僕が出会った大人の中で最高の大人です」とも述べていました。

 涼太君は現在、高校を卒業し、介護士として働いています。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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6人の孫たちに、エールを!

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何が正解か?読めない時代に子育てをしている親たちは、悩みが多いと思います。良い子だったのに…。愛情込めて育てたはずなのに…。でも、そのまま大人になることはありえない。

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