わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
祖母の転倒、骨折を機に、大卒後2年勤めた会社をやめて起業…孫世代が高齢者に寄り添う社会に
シニアの暮らしをサポートする事業を展開する…赤木円香さん(29)
シニアの暮らしをプロデュースする企業を経営しています。大学生らに高齢者のパートナーになってもらい、スマートフォンの使い方を教えたり、外出の付き添いをしたりして、高齢者に社会とのつながりを感じてもらうサービスを提供しています。
高齢者に孫世代の若者が寄り添うことで、人生に彩りや豊かさが加わる。そうした新たな高齢化社会の実現を目指しています。
起業を意識したのは高校2年の時です。バングラデシュで高品質なバッグを製作する「マザーハウス」を創業した山口絵理子さんの著書を読んだのがきっかけでした。様々な困難に巻き込まれながら、心を折らずに突き進む生きざまに感銘を受けました。利益だけではなく、社会への貢献も追求する「社会起業家」という言葉も知り、自分もそうなりたいと強くあこがれるようになりました。
大学では経営戦略のゼミで財務や経理を勉強し、食品宅配大手でのインターンも経験しました。卒業後は起業に必要な経験を得たいと考え、「味の素」に就職しました。財務経理部門に配属され、大企業の仕事の進め方を肌で感じることができましたが、大学の同期らが起業し始め、徐々に焦りも感じていました。
そんなとき、大好きな祖母が転倒し、骨折しました。治った後は引きこもりがちになり、周囲のサポートに「ごめんね」と謝罪を繰り返すようになりました。
「本来はリスペクトされるべき高齢者世代が、人生の最後に、家族や社会に謝らなきゃいけないのはおかしい」。そう強く感じ、シニア世代が対象のサービスで起業することを決め、2年勤めた味の素を退職しました。
起業に向けては、インターン先で聞いた「まずはお客様の声を聞く」という言葉を実践し、東京の巣鴨などで高齢者100人にヒアリングをしました。その結果、高齢者は金銭的に余裕があっても孤独を感じている人が多く、居場所づくりや「やればできる」という満足感を得ることにニーズがあることがわかりました。
現在は社員や大学生らのスタッフ総勢30人で運営しています。実際に高齢者とふれ合うので、スタッフは面接などで基準を満たした人を採用し、育成にも力を入れています。高齢者との交流を通して、学生らのコミュニケーション能力が向上する。そんな成長する姿を見るのもやりがいの一つになっています。
今後はサービスの規模をさらに拡大し、オンライン上でも世代間交流の場をつくりたいと考えています。目指すのは「3600万人の65歳以上のシニア全員がワクワクする社会の創造」です。(聞き手・田野口遼)
あかぎ・まどか 1993年、東京都生まれ。2017年に慶応大を卒業後、食品大手「味の素」に勤務。20年に株式会社「MIHARU」を創業し、パートナーサービス「もっとメイト」を展開している。
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。