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あんしんゼミ

医療・健康・介護のコラム

認知症高齢者 災害が起きた際の避難の対処 どんな配慮が必要になる?

認知症高齢者 避難の対処は?…くつろげる場所用意

 ゼミ生  地域の災害訓練に参加しました。認知症の高齢者のいる家庭もあって、避難の際や、避難所生活では配慮が必要になると思いました。

環境に敏感に反応

 教授  2011年の東日本大震災の事例があります。被災地となった宮城県の認知症介護研究・研修仙台センターによると、認知症の高齢者の間では、震災が起きて避難したことを忘れて混乱し、落ち着かない状態になったり、家に帰ろうと 徘徊はいかい したりするケースが相次いだそうです。

 「行動・心理症状(BPSD)」といって、住み慣れた自宅とは違った落ち着かない環境に、敏感に反応することがあるため、くつろげる場所を用意する必要があります。

 ゼミ生  具体的な対応方法を教えてください。

 教授  被災直後の混乱した状況で、個室や介護専用スペースを設けるのは難しいでしょう。

 避難所に間仕切りがない場合、家族は保健師や看護師ら支援スタッフに相談し、段ボールなどで簡易なものを設けてもらってください。慣れない避難所での緊張から、いつも以上に排せつに時間がかかるかもしれません。本人がトイレに移動しやすい場所を確保してもらうことも検討するといいでしょう。近所の人や親戚など、顔見知りが同じ避難所にいる場合は、そばにいてもらうと、本人の気持ちが落ち着くと思います。

福祉避難所利用も

 ゼミ生  注意点はありますか。

 教授  認知症でも、一人で何もできないわけではありません。自宅を離れ、生活環境が変化することが強いストレスとなり、心身の状態が崩れるということです。一緒に避難する家族のサポートはもちろんですが、周囲の人たちの理解も欠かせません。

 ゼミ生  困ったら、まずは相談してみるとよさそうですね。

 教授  家族は遠慮なく助けを求めてください。特別養護老人ホームなど専門的な施設に開設される福祉避難所に移ることも、積極的に考えましょう。2025年には認知症の人が約700万人と、高齢者の5人に1人を占めると予測されています。避難生活には制約もありますが、認知症の人や家族のニーズにも柔軟に対応できる体制づくりが、ますます求められています。

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