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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

大浴場のレジオネラ属菌問題はなぜ起きた?

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 福岡県の旅館で、大浴場のお湯を年2回しか入れ替えていなかったことが問題になっています。公衆浴場法に基づく県の条例では週1回以上の湯の入れ替えが要請されていました。さらに、同施設ではレジオネラ属菌が検出されました。この旅館はレジオネラ属菌が検出されたあとも、県の調査にも虚偽の説明をしていたそうです。報道によると、当該旅館では「法令順守に対する考えが甘かった」「大した菌ではないという認識があった」のだそうです。

「大丸別荘」社長、自ら湯を入れ替えないよう指示…レジオネラ属菌「大した菌ではないと認識」

「大丸別荘」湯の入れ替え年2回、基準値3700倍のレジオネラ属菌…県調査に虚偽説明

肺炎の原因菌 死亡することも

大浴場のレジオネラ属菌問題はなぜ起きた?

 レジオネラ属菌は、レジオネラ症( https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/530-legionella.html )を引き起こし、肺炎の原因となります。循環風呂はリスクとなります。これはレジオネラ属菌が20~45度という温度で増殖することと、お湯の中にいるアメーバという寄生虫のなかで生息するため、お湯を流しているだけでは除去できないことが原因です。だから、公衆浴場においてはレジオネラ属菌が増殖し、これが感染症を起こさないための対策が義務付けられているのですね。

 ぼくの住む神戸市も、レジオネラ属菌が100mlあたり10個以上検出されないことを、公衆浴場法施行条例に明記しています。

https://www1.g-reiki.net/city.kobe/reiki_honbun/k302RG00001549.html

 国立感染症研究所によると、レジオネラ属菌の集団感染は入浴施設で複数回報告されています。そして、一定数の方は亡くなっています。レジオネラ属菌は重症肺炎を起こすことがありますし、公衆浴場の使用は高齢者に多いですから、死亡リスクも高いのですね。

 レジオネラ症は感染症法では「4類」に分類されていて、全数把握疾患です。毎年2000例程度の報告があります。

(レジオネラ症の届出状況、2011年第1週~2021年第35週) https://www.niid.go.jp/niid/ja/legionella-m/legionella-idwrs/10791-legionella-20211201.html

 しかし、実際にはこれよりもはるかに多くのレジオネラ症が発生していると推測します。尿や呼吸器検体で特殊な検査をしないとレジオネラ症は診断できません。医療現場では肺炎はよくある、日常的な病気ですが、このレジオネラ症を念頭におき、患者さんに入浴施設を利用したかどうか確認しなかったり、検査をしていなかったりする医者はとても多いのです。だから、実際にはかなりのレジオネラ症が医療機関で見逃されていることでしょう。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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