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発達障害についてスマホで学べる動画「incluvox」を制作したアナウンサー…テレビ番組制作スタッフらとともに、すでに400本以上公開
国の対応を待てない スマホで動画が見られればいい
こうした現状をまとめた赤平さんは2021年6月、国会議員経由で文部科学省にリポートを持っていきました。それに対して担当者は、対面型の研修がうまくいっておらず、教育現場で発達障害に対する知見が高まっていないことを認めたうえで、2020年に厚生労働省とプロジェクトチームを発足させて対応を検討していると説明しました。
「自分の指摘が間違っていなかったのはよかったのですが、省庁をまたぐ仕事なんて1年、2年では進まない。ぼくはあくまで自分の子どもを助けるために社会を何とかしたいと思って動いているので、それを待っていたら子どもの成長に間に合いそうもありません。そこで何ができるか考えた時、非効率な対面型研修を続けなくても、スマートフォンで、発達障害に対する知識や理解を深めてもらえる動画を見られるようにすればいいんじゃないかと思ったんです。それなら講師も不要だし、どこかに行く必要もない。今どき、動画編集はコストもかからないので、すぐにできそうだなと……」
赤平さんはすぐに動画メディア制作のための会社を設立。22年6月から本格的にサービスを開始しました。身近に発達障害を持つ人がいるなど、この問題を本当に理解してくれるテレビ番組制作スタッフや医療関係者などに声をかけ、全員が複業(副業)として動画作りに協力してくれています。
月額770円で基本知識、専門家インタビュー、ニュースなど
動画の内容は、基本的な知識の解説をはじめ、専門家へのインタビュー、最新ニュースなどで、すでに400本以上あります。新たな動画は毎月8本、年間で約100本出しています。すべてナレーションと字幕をつけているので、「ながら見」や「ながら聴き」など環境に応じた形で視聴できます。サイトに登録し、月額770円(税込み)を払うと、すべての動画を見ることができます。
赤平さんは「発達障害のeラーニング教材自体はすでに山ほどありますが、何万円と高価だったり、視聴できる期間が限られていたりします。それに内容も深くて、『ながら見』できるレベルじゃない。incluvoxは、お金も時間もあまりかけずに、何か必要に迫られた時や困った時に気軽に見てもらえればいいし、いつでも解約できます。少しでも早く発達障害に対する正しい理解を広めるため、保護者や教育者、企業などに利用してもらいたいです」と話しています。(読売新聞メディア局 藤田勝)
赤平大(あかひら・まさる) アナウンサー、ナレーター、講師。2001年4月~09年3月、テレビ東京アナウンス部。21年6月~、「incluvox」を運営するvoice and peace代表取締役。15年4月~千代田区立麹町中学校アドバイザー(学校改革支援・文化祭演出など)。21年4月~横浜創英中学・高等学校講師(サイエンスコース)。
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