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大川智彦「先手を打って、病に克つ」

医療・健康・介護のコラム

認知症は予防、改善ができる――、ヨーロッパの研究で明らかになった「真実」とは

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 備えあれば患い(憂い)なし――。私たちが日常でよく使うことわざで、中国の歴史書「 (しょ)(きょう) 」が由来とされています。今年5月、新型コロナ感染症の感染症法上の分類が変更され、それに先立ち3月13日からはマスクの着用が「個人判断」へと変更になります( https://corona.go.jp/proposal/ )。感染拡大が落ち着いてきたとはいえ、まだまだ油断できる段階ではありませんし、今後のウイルス変異によっては、再び社会状況が変わることも考えられます。決して「憂い」がなくなったわけではないので、マスク着用の有無だけでなく、的確な個人判断の「備え」が求められることは言うまでもありません。

英国で認知症発症者が減った理由

認知症は予防、改善ができる――、ヨーロッパの研究で明らかになった「真実」とは

 認知症対策も、備えたからといって憂いがなくなるわけではありませんが、無理のない範囲で実行していくことで、全身の健康維持につながるものばかりです。これまで3回にわたってお送りしてきた認知症対策の締めとして、今回は世界で行われている研究や対策をご紹介します。認知症の現在地、そして個人判断で行う日々の「備え」が見えてくるはずです。

 まずは英国発の意外なデータから。

 同国では三つの地域の住民(いずれも65歳以上)を対象に認知症の有病率を調べ、そのデータを基に認知症有病率の予測値を割り出す「CFAS研究(Cognitive Function and Ageing Study)」を実施しました。第1部(1989~1994年)と、約20年後の第2部(2008~2011年)に分けて調べた結果、第1部よりも第2部のほうの有病率が3割も減少していたのです。つまり、最近の高齢者の方が以前の高齢者に比べて認知症のリスクが低いことが示されたということ。

 ちょっとびっくりですよね。我が国では、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は15%以上、2012年の時点で約462万人に上ったことが厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。それが、2025年には推計20.6%、730万人と増加し、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると結論付けています。あくまでも予測に過ぎませんので、再来年がどんな状況になっているかは「神のみぞ知る」ですが、「英国は減少」「日本は増加」と正反対になっている現実には、しっかりと注視すべきでしょう。

 どうして英国はこのような結果を出すことができたのでしょうか。

 それは、2005年から「心臓に良いことは、頭にもよい」(What’s good for your heart is good for your head)という標語のもと、国を挙げて認知症予防に取り組んできた成果と言えるのです。つまり、心臓病対策を認知症対策に (ひも) づけて、禁煙や減塩のキャンペーンを実施したことが功を奏したわけです。

 とくに英国人が大好きなパンを製造する業界と一緒に取り組んだところ、3年間で10%もの減塩を成功させました。結果的に、脳卒中、心臓病、糖尿病などの発症を抑えることができ、年間2600億円もの医療費を削減したそうです。 前回のコラム でも紹介した通り、それらの疾病は認知症発症に関わっていることは間違いありません。

 そもそもパンの塩分が、人々の血圧に大きな影響を与えていたことも驚きですが、日本人の主食である「おコメ」の場合、そのままでは塩分ゼロでも、パン以上に塩辛いおかずとの相性が抜群ですね。一般的には、高血圧対策と認識されている減塩ですが、認知症を遠ざける効果もあることを、英国の成果が教えてくれているわけです。

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大川智彦(おおかわ・ともひこ)

 佐野メディカルセンター理事。1969年、名古屋市立大医学部卒。放射線腫瘍医として (がん) 研究会病院放射線科などで勤務し、英国留学後、94年、東京女子医大放射線科主任教授に就任。その後、徳洲会病院グループ放射線科部門長、東京西徳洲会病院副院長・検診センター長、佐野メディカルセンター予防医療センター長などを歴任し、2019年より現職。

大川智彦「先手を打って、病に克つ」の一覧を見る

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