文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

感染症専門医が糖尿病も診る時代 性的マイノリティーの患者には手術も提案…医療界に求められる多様性とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 今、「ダイバーシティー」(多様性)の重要性が、様々な分野で言われています。今回は、医療におけるダイバーシティーについて書きたいと思います。

HIVの治療は「感染症屋におまかせ」ではなくなった

感染症専門医が糖尿病も診る時代 性的マイノリティーの患者には手術も提案…医療界に求められる多様性とは

 米国感染症学会(IDSA)が、HIV(エイズウイルス)感染者のためのプライマリーケアのガイドライン(指針)を出しています。これが実によくできています。

https://www.idsociety.org/practice-guideline/primary-care-management-of-people-with-HIV/#FullRecommendationsforthePrimaryCareofPersonswithHIV

 かつて、HIV感染は極めて高度な感染症や免疫学、そして抗ウイルス薬の知識を必要とする、とてもトンガッた専門領域でした。ほとんどの医師はそういうトンガッた知識を持っていません(持つ必要もない)から、「あれは感染症屋におまかせ」と考えるのが一般的でした。

 しかし、飲みやすくて副作用が少ない治療薬が登場し、この数十年でHIV感染者に対するケアは激変しました。かつては「死ぬ病気」と言われていましたが、「死なない病気」になりました。

 免疫不全のためにあれやこれやの感染症にかかっていた患者さんも、そうしたことがなくなり、毎日お薬を飲んで、定期的に外来で受診するだけになりました。ほとんどの患者さんにおいては、専門家は「やることがなくなった」のでした。その専門性においては。

 代わりに問題になってきたのがプライマリーケアです。多くのHIV感染者は元気で長生きするようになったため、患者さんは高齢化し、それに伴いあれやこれやの慢性疾患を持つ人も増えてきました。

 高血圧、糖尿病、うつ病、喫煙、乳がん、大腸がん……。かつては、こういったことを考える必要はあまりなかったのですが、患者さんの長寿、高齢化のために無視できなくなったのです。

 というわけで、一般医療の複雑な問題と取っ組み合わねばならなくなってきたのです。「プライマリーケアのガイドライン」ができたのには、そういった背景があります。

 ぼくの外来にもHIV感染のある方はたくさんおいでなのですが、現在はほとんどの患者さんは「感染症」が主戦場ではありません。血圧を下げる薬、糖尿病の薬、抗うつ薬、禁煙指導、がんのスクリーニングなんかも、基本的には自分でやっています。もちろん、サッカーと同じで「持ちすぎ」は禁物です(例え話が変か?)。

 血糖コントロールが難しくなった患者さんは、すぐに糖尿病の専門医に診てもらいますし、がんになったら腫瘍内科など、がんの専門家たちに治療をお願いします。だから、ぼくらは「なんでもできる」と (うそぶ) くつもりは全くないのです。それでも「感染症以外は知らん」と専門領域しかタッチしない、ということはないのです。それだと患者さんも臓器ごとに、それぞれの専門医に診てもらう「たらい回し」になりかねません。

1 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

iwaken_500

岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

Dr.イワケンの「感染症のリアル」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事