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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

危険な自転車事故…ヘルメット着用が全年齢で努力義務になるわけ

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 これまで、自動車事故についてお話ししてきましたが、今回から自転車事故についてお話しします。実は、子どもの事故に関わる製品の上位は「自転車」と「遊具」なのです。今回は、子どもが自転車に乗る場合の事故についてお話しします。

危険な自転車事故…ヘルメット着用が全年齢で努力義務になるわけ

イラスト:高橋まや

ヘルメット非着用時の致死率は1・6倍

 警察庁のデータによると、幼児(未就園児・就園児)の交通事故(2020年)による死者・重傷者は224人、このうち自転車事故は15人(約7%)でした。児童(小学生)の交通事故による死者・重傷者は637人で、このうち自転車事故は224人(35%)でした。

 小学生の自転車乗車中の死者・重傷者数は、近年、ほとんど変化がみられません。小中高と学年が進むにつれて自転車に乗る機会が増え、事故も多くなります。

 知っておいてもらいたいのが、頭を守るヘルメットの重要性です。自転車事故で、ヘルメットを着用していない場合の致死率は、着用している場合の約1・6倍にもなります。

どこのケガが多いのか?

危険な自転車事故…ヘルメット着用が全年齢で努力義務になるわけ

 産業技術総合研究所では、病院等から自転車事故による子どもの傷害データを481件収集し、身体のどの部分にケガをしているのかを調べ、それらを人体図上に重ね合わせました。赤色の方が頻度が高いことを示しています。その結果を表したのが左図です。頭の部分、特におでこのあたりや、ひざ、かかとにケガをしている子どもが多いことがわかります。

 かかとのケガは、子どもが後部座席に座っていて、伸ばした足が走行中の自転車の後輪に巻き込まれ、スポークに挟まれてケガをしています。これを防ぐには、自転車の後輪にカバーをつければよいのです。

ヘルメットの着用は努力義務

 自転車の事故による脳損傷に対して、最も効果的な予防策はヘルメットの着用です。

 日本では、2008年の道路交通法改正により、幼児および児童(13歳未満)に対するヘルメット着用の努力義務が施行されました(道路交通法 第63条の11)。

 保護者が運転する自転車に子どもを同乗させる場合でも、子ども自身が自転車を運転する場合でもヘルメットを着用するよう努めなければならないということです。今年4月からは、自転車に乗るときは全年齢でヘルメットの着用が努力義務となります。

 最近では、キックスケーターや自転車にそっくりな「ペダルなし二輪車」が普及していますが、これらを使う際にも当然、ヘルメットを着用する必要があります。

ヘルメットを着用している?

 2019年に、子どもの自転車ヘルメットの着用についての調査が、ヘルメットメーカー「オージーケーカブト」によって行われました。子どもを持つ保護者約2万4000人を対象に行った結果、43%が子どもにヘルメットを着用させておらず、その割合は第2子以降高くなっていました。「ヘルメットの着用は努力義務」であることを半数以上の人が知らず、非着用の理由のトップは「まわりの子どもが着用していないから」(26.1%)でした。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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