お笑いタレントのにしおかすみこさん コロナ禍で認知症の母親を介護
インタビューズ
[にしおかすみこさん](上)コロナ禍で認知症になった母…何をしても私が「ダメ」と言わないワケ
女王様キャラで人気を博した、お笑いタレントのにしおかすみこさんは、コロナ禍になり、千葉県にある実家に戻られたそうです。久々に帰ると、お母さんの様子がおかしい。ほどなくして、認知症だと分かりました。どのような生活が始まったのか、話をうかがいました。(聞き手・利根川昌紀、撮影・中山博敬)
母が“ゴミ屋敷”にぽつんと座っていた
――どうして、実家に帰ろうと思われたのですか。
コロナ禍で仕事がゼロになり、家賃が払えなくなりました。引っ越し先も一応、「ここ」っていうのを決めていて。何となく「実家大丈夫かな。どうしているかな」と思って1回、帰ってみたら、ゴミ屋敷みたいになっていたので、どうしたんだろうって。
――ゴミ屋敷?
生ゴミ臭いし、生ゴミも転がっている。床が砂場みたいになっていて、踏むと砂でジャリジャリするような感じでした。
――ご家族は……。
母は、ゴミの中でポツンと座椅子に座っていました。どうしちゃったのかなって、びっくりしました。単純にゴミの中に座っている母が、何か、こう悲しくて……。何でこんなことになっているんだろうって感じでした。これを放っておいて、一人暮らしはちょっとなっと思って、実家に戻ることにしました。
もう、住むと決めたので、何週間もかけて掃除をしました。
――住み始めて、「お母さんは認知症かもしれない」と思われたそうですね。
戻ってからけっこう早かったです。何かの時に怒って、「頭かち割って死んでやる」と言うんです。「死ぬ」という言葉を使う母の姿は見たことがありませんでした。
“死ぬ”時は絶対に、姉も一緒に連れて2階に上がるんです。最初の頃は、「本当に死んだらどうしよう」と思って(自分も)2階に上がると、2人で寝ている。しばらく寝ているなと思ったら、下りてきて、また怒り出すんです。同じような怒り方で「頭かち割って死んでやる」って。これを3セットぐらい繰り返す。
――病院に行こうと持ちかけた時、お母さんに抵抗されませんでしたか?
もめました(笑)。もう頭ごなしに「行く必要がない」っていうようなことも言いますし、不愉快な気分と不安な気持ちの両方だったんじゃないかと思います。
途中で諦めていたら、ある時、「煮るなり焼くなり好きにしたらいいさ」って言われて。「行くってことだな」と思ってすぐにタクシーを呼んで、そのまま連れて行きました。
公園で缶コーヒーを飲んでいると思われていて
――検査の結果、認知症と診断されました。その時、どのようなことを考えましたか。
「やっぱり」っていうのと、「私のやったことは合っていたのかな」という思いでした。母と一緒に、頭の検査画像を見るんですけど、母は落ち込んだ顔をしていました。
私は、今後のためとか、介護保険のことを考えて「一回病院に連れて行かないと本当に認知症なのかどうか分からないな」と思ったのですが、母が傷ついているのを見ると、どうだったのかなって。
忘れ方は早くなってきています。以前は30分前のことを忘れると、「うわ、早いな」っていうぐらいだったのですが、今は、キャッチボールが「ひと会話」終わったら、もう最初のことは忘れている。けど、 徘徊 することはないですし、寝たきりにもなっていません。元気は元気です。治療もしていませんし、介護保険も申請していません。だから、病院に行くタイミングがいつだったら良かったのか。「あの時」で合っていたのかどうか、今でも分かりません。
あと、「私が無職」だって、ずっと思っていて(笑)。仕事に行くと言って家を出ても、「見えを張って、公園に行って缶コーヒーを飲んでいる」と思っています。まぁ、それでいいかと思っています。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。