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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

医療・健康・介護のコラム

夫婦生活を拒んで離婚した30歳代女性は「シェーグレン症候群」だった…性交痛があるとの訴えが診断のきっかけに

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 仕事でもプライベートでも、ものごとを切れ味よく解決する、結論を出せる能力には憧れますよね。一方でネガティブ・ケイパビリティという言葉があります。答えの出ない状況を受容する能力です。今回は、ネガティブ・ケイパビリティの重要性について考えます。

目や口の乾きを訴えて受診

夫婦生活ができず、「愛情がなくなったのか」と夫から責められ離婚……シェーグレン症候群が原因だった

 30歳代後半の女性が目や口の乾きを訴えて受診されました。

 ある日、突然、急に、というわけではなく、10年近く前からだんだんと強くなってきた症状とのことです。このくらいの年齢の女性でこのような症状を聞いたら、医師なら一度は「シェーグレン症候群なのではないか」との思いが頭をよぎります。

 シェーグレン症候群はリンパ球が涙腺や唾液腺に浸潤することにより眼球乾燥や 口腔(こうくう) 乾燥が生じる免疫の病気です。50歳代の女性が最多であるものの、あらゆる年齢層に広く分布しています。男女比は女性の割合が男性の10倍以上と非常に性差の大きい病気です。

問診のコツ

 問診するにはコツがあります。「目が乾きますか?」「口が乾きますか?」というYES・NOで答える質問ではなく、例えば「(乾燥して)目薬を使う回数は? 急に増えてきましたか?」「パンなどのパサついた食べ物が、水がないと飲み込めないようになっていませんか?」などと、症状の程度や頻度、そして時間経過なども合わせて聞き出していくことで、より診断に役立つ立体的な情報となっていきます。

 唾液が減少していくと虫歯になりやすいということも知っておくと有用ですし、症状の出現前に飲み始めた薬がないか、ということも確認しないといけません(花粉症やアレルギーの病気で使われる薬など意外と口の乾燥を引き起こす薬は少なくないのです……)。

 質問を進めていくとどうやら更年期の症状ではなさそう(年齢も若く、生理もまだ定期的に来ている)、特に症状に関連しそうな薬の服用等もなさそうです。

 一方で特に目の乾燥症状は年々ゆるやかに悪化し、生活にも支障が出ています。これは一度、シェーグレン症候群を念頭に採血、眼科の紹介などをしようかな、と患者さんと話をしながら思い始めた頃でした。

 どんな流れだったか失念しましたが、雑談で生活やご家族の話になった時です。

「愛がない」と言われて

 患者さんは現在は離婚して一人暮らしとのことですが、あっけらかんとした表情で「夫婦生活がうまくいかなくなったんです。夫からは、『愛情がなくなったのか』と責められてしまった。ただ、どうしても(性交渉が)痛くて出来なくて……それだけではないと思うのですけど、結局、離婚してしまいました」と話します。

 あわててその場で調べてみるとシェーグレン症候群で症状が出る臓器は目や口だけではなく、粘膜がある部位であれば症状が発生することがあると記載しております。

 特に外陰部、 (ちつ) の表面を覆っている粘膜が乾燥してしまう場合、性交時に痛みを伴うこともあるというのです。もしかしたらシェーグレン症候群で全ての症状が説明つくかも……という予感が走りました。

 実は患者さん自身もネット等で調べて、「シェーグレン症候群なのでは」という疑いはだいぶ前に持っていたようなのですが、過去の検査では基準を満たさなかったため診断に至らなかったそうです。

 今回は血液検査や涙の分泌量の検査を経て診断確定となり、 膠原(こうげん) 病科の外来に通院開始となりました。膠原病とは、全身の皮膚や内臓に炎症が起こってしまう病気の総称で、シェーグレン症候群も含まれます。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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