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介護の負担を軽減するロボット 開発支援の拠点「リビングラボ」の整備進む…厚生労働省

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 介護現場の負担を軽減する介護ロボットの開発・普及を促そうと、厚生労働省は、開発支援の拠点となる「リビングラボ」の整備を進めている。企業と介護現場をつなぎ、使う人の要望を踏まえた製品の開発をサポートする狙いだ。(小沼聖実)

「リビングラボ」で実験や意見収集

介護ロボ開発 企業と現場連携

企業が開発したパワーアシストスーツの効果を測定する学生(スマートライフケア共創工房で)

 筋肉の活動量を計測する装置、着た人の動作を解析できるセンサーが全身についたボディースーツ――。九州工業大学(北九州市)の「スマートライフケア共創工房」は、介護ロボットの効果測定や安全性評価などを行うため、厚労省が全国8か所に整備した「リビングラボ」の一つだ。

 各種計測機器のほか、介護用のベッドやトイレ、浴槽なども備え、介護現場に近い環境で測定できる。市内の介護事業者の協力で、現場で実際に使ってみることもできる。2020年度以降、のべ18社の相談に対応した。

 自動車部品製造の「ジェイテクト」(愛知県刈谷市)は20年、自社の開発したパワーアシストスーツの効果測定を依頼した。胴衣に搭載したモーターで両膝に装着したベルトを巻き上げ、介助者が人を抱え上げる時の動きを助ける製品だ。

 共創工房では、介助者の腰への負担がどの程度軽減されるかを計測。特別養護老人ホームでも使ってもらい、「装着したままではかがみにくい」といった感想を踏まえて改良した。正しい使い方をせずに「アシストのタイミングが動作とあわない」とする指摘もあり、研修の重要性も改めて認識したという。

 ジェイテクトのアクティブ・ライフ事業部の尾崎光晴部長は「定量的な評価ができるのはもちろん、実際に使う人の意見を聞けるのが魅力だった」と話す。

「本当に使える製品」には不可欠

介護ロボ開発 企業と現場連携

 全国8か所のリビングラボが21年度に行った開発支援は計180件。ラボの運営を担うのは大学や介護事業者など様々で、それぞれ異なる特徴を持つ。

 藤田医科大(愛知県豊明市)のラボでは、リハビリの専門医や理学療法士などが相談に応じる。介護大手のSOMPOケアなどのラボは、現場のニーズ収集や実装に向けた課題の洗い出しに強みがある。

 共創工房の代表で、九州工業大大学院生命体工学研究科の柴田智広教授は「企業が想定する介助者の動きと、現場での実際の動きは異なることが多い。『本当に使える製品』の開発には、ラボと介護現場、ラボ同士の連携や情報共有が不可欠だ」と説明する。

 厚労省は介護ロボットに関する相談窓口も全国に17か所設け、企業にラボを紹介したり、導入を検討する施設にロボットを貸し出したりしている。21年度は相談約1000件と試用貸し出し約300件に対応し、77件で介護ロボット導入につながったという。

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