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[つながる]第1部 地域ではぐくむ<2>カレー店で100円の代金を払えなかった少年…社会人になり、店で発した言葉に店主は涙

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育ててもらった地元へ恩返し

 中学3年生までの子どもが無料でカレーライスを食べられる、奈良県橿原かしはら市の飲食店「げんきカレー」は2018年に開店しました。始めて5年ほどたちましたが、経営は毎月赤字だといいます。それでも店を続けるのには、店主の思いがあるのだそうです。

お金気にせず おなかいっぱいに

 「げんきカレー」は、週4日、ランチタイムに営業している。子どもたちも食べに来る土、日曜と、200円のチケットで応援してくれる地域の大人たち向けに店を開ける水、木曜だ。

 店主の斉藤 しげる さん(51)の本業は、英会話教室の経営。カレー店は一人で切り盛りしていて、お米は農家が寄付してくれるが、店舗の賃料や光熱費で、実は毎月5万円弱の赤字だという。よく尋ねられる。「なんで店をやっているの?」

幼少期の思い出

[つながる]第1部 地域ではぐくむ<2>育ててもらった地元へ恩返し

斉藤さん(右)に近況を報告しながら「げんきカレー」を味わう倉本さん(昨年12月)

 4人きょうだいの末っ子として地元で育った斉藤さんは、小学校から帰ってくると、近所の家のおばちゃんに、よく声をかけられた。「お帰り。リンゴあるで。あがって食べていき」

 共働きの両親は暗くなるまで帰らない。「分からんとこあるなら、見たるで」。その家のお姉ちゃんが算数を教えてくれた。何度も夕食をごちそうになった。

 少年野球の帰り道には、同級生の親が営む喫茶店にみんなで寄ってプリンアラモードを食べた。「立ち寄れる場所がいっぱいあって、地域の人たちに育ててもらった。恩返しとして、昔のような地域のつながりを取り戻したい」。そんな思いがあった。

 本業での経験も、店の仕組み作りに影響している。

 起業して20年近くになる英会話教室。「世界に視野を広げてほしい」という思いで運営しているが、楽しそうに通っていた子が、家庭の事情でやめることがある。母親の横で、「なんで、もう来たらあかんの?」と残念がっていた子もいた。

 リストラや両親の離婚など、事情はいろいろあると思う。でも、「8000円の月謝を切り詰める必要がある状況で、ちゃんとご飯を食べられているのだろうか」と心配になった。

 子どもなら誰でも、お金のことを気にせずにおなかいっぱい食べられて、勉強もできる場所を作れないだろうか――。近隣の「子ども食堂」を見学して、夢を具体的にしていった。週に1回とか月に1回の食堂ではなく、お店を開こう。カレーなら、作っておけば盛りつけるだけだ。トッピングでメニューも増やせる。「なんと言っても、子どもたちはカレーが大好きだ」

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