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[つながる]第1部 地域ではぐくむ<1>「子どもは無料」のカレー店 客が誰かのために「チケット」購入…大人たちも笑顔になれるワケ

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「誰かの役に」カレー無料券

 人と人のつながりから、大きな力が生まれることがあります。年間連載「つながる」の第1部では、地域の人たちが、子どもたちの成長を支えようとする試みを取り上げます。まずは、子どもの「食」と「学び」を応援する、小さなカレー店の挑戦から――。

店内ボード 大人から子どもたちへ

 「お金なんていらんよ」。店主の斉藤 しげる さん(51)がそう優しく声をかけると、近くの小学6年生、岡 桜彩名ろあな さん(12)が「いいんですか?」とびっくりした表情で、握りしめていた2枚の100円玉を水色の財布にしまった。ここで食べたことがあるクラスメートの西川愛里さん(12)と笑顔でテーブル席に着いた。

 奈良県 橿原かしはら 市の「げんきカレー」では、店内のホワイトボードに貼られた「みらいチケット」を取れば、中学3年生までの子どもはカレーライスを無料で食べられる。

客が200円で購入

[つながる]第1部 地域ではぐくむ<1>「子どもは無料」のカレー店 客が誰かのために「チケット」購入…大人たちも笑顔になれるワケ

「みらいチケット」をホワイトボードに貼る客

 「このチケットは、大人たちがみんなのために買っておいてくれるんや」。チケットは1枚200円。鶏肉がゴロゴロ入って、タマネギの甘みが子どもの口にも優しいカレーを食べ始めた2人に、斉藤さんが説明する。「みんなが食べに来るのが、大人はうれしい。『ありがとう』と思って食べてくれたらいいんだよ」

 日曜日のお昼過ぎ。「何のお菓子が好き?」「ポッキーかトッポか迷うなー」。そんなおしゃべりをしながら1時間ほど店にいた2人は、大人の客がチケットを貼っていくのを見て声をそろえた。「ありがとうございます!」

「気軽に応援」4年半で3000枚

 「おっ、使われてるな」

 近くの営業所で働く白井修二さん(48)は来店してすぐに、2日前に貼ったチケットがなくなっているのに気付いて笑顔になった。

 3年前、200円で食べられるカレー店があることをインターネットで知った。店で仕組みを聞き、「自分が食べたら、子どもたちのためのチケットも買う」と決めて「げんきカレー」に通っている。自分が貼ったチケットを子どもが取ってくれた瞬間に遭遇したことも。「誰かの役に立っているって実感できて、うれしいんです」

 この日、待ち合わせて一緒に来た会社の先輩、内海大介さん(51)は1年前の転勤で、以前のように頻繁に通えなくなった。でも、白井さんに、「顔を出す時は、自分からの分として1枚貼っておいて」と頼んでいる。2人とも独身で子どもはいない。「気軽に地域の子どもを応援できるのがいい」と内海さんは話す。

 2018年夏にチケットの販売を始めてから、大人たちが貼ったチケットは累計で3000枚を超えている。カレーライスやトッピングの揚げ物などに姿を変え、子どもたちの笑顔を支えてきた。

助けるのは当たり前

 昨年11月、初めて来店した会社員、田中 明子はるこ さん(55)はチケットを2枚貼り、ボードにメッセージを書き添えた。「たくさん食べて大きくなあれ」。イラストを描いてアピールしたり、小さな子の手が届きやすい高さに貼ってみたり、大人たちも楽しそうだ。

 「げんきカレー」は困窮状態の子に対象を絞った店ではなく、中学生以下なら誰でも、お金を払わずにカレーを食べることができる。でも、もしかしたら、やって来る子どもたちの中に、3食を満足にとれていなくて、元気がない子がいるかもしれない。

 「俺らは働いているから、おなかがすいている子がおるんだったら助けるのは当たり前。この仕組みは一番いいんちゃうかな」。近くの土木建築会社に勤める西本和真さん(47)は300円のフィッシュカレーを食べ終えると、「チケット4枚」と言って1100円を払い、「貼っといてや」と少し照れくさそうに店を出た。

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