文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

大川智彦「先手を打って、病に克つ」

医療・健康・介護のコラム

「最近、物忘れが」と自覚するのは認知症の始まり? それとも……

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「今年(2022年)の漢字」は、ウクライナ情勢の長期化などを受けて「戦」でした。ちょっと物騒な文字ですが、23年にも長引く物価高騰、省エネ対策など、消費者目線では「戦い」が必要な場面は続きそうです。どんな状況になっても負けずに対処できるように、せめて健康だけは万全な状態にしておきたいものです。

 さて、22年11月、米国の有力医学誌に、アルツハイマー型認知症への新薬「レカネマブ」についての論文が掲載されました。詳しい内容に興味がある方は、ネットで検索していただきたいのですが、簡単にまとめると「症状の悪化を約27%抑制し、病気の進行を遅らせる効果があった」「脳で疾病の原因とされるアミロイドβが減少」など、今後の治療に一筋の光が差すものになったようです。とはいえ、認知症への効果としてはパンチ不足の印象でした。まだまだ、個人、そして家庭における意識の持ち方が問われる状況は続きます。

認知機能の劇的改善は

「最近、物忘れが」と自覚するのは認知症の始まり? それとも……

 前回のコラム では、75歳でアルツハイマー型と診断されながら、楽観的で前向きな考え方、それにご家族の理解と献身によって88歳で沖縄旅行、90歳で富士登山を実現させた女性T・Sさん(94)についてご紹介しました。現在も長女や孫たちとの外出や、大好きなぬり絵、脳トレゲーム、そして毎日の散歩を欠かさず、記憶力も年齢相応で、楽しく過ごされているそうです。

 こうなると、「T・Sさんは、本当にアルツハイマー型認知症だったのか?」と疑問を感じる向きもあると思います。かつての症状や検査結果を見る限り、担当医が「認知症」と診断したことには疑問の余地はありません。

 一般的には「いったん、アルツハイマー型認知症になると、元に戻すことは難しい。進行を遅らせることが課題」と認識されていますので、T・Sさんは極めてレアで幸福なケースだったのかもしれません。認知症には、まだわからないことがたくさんあります。

 いずれにせよ、加齢に伴い、誰にでもある程度の認知障害は出ます。「疾病としての認知症」と「加齢による認知障害」はまったく違いますが、悲観し、あきらめてしまうと、不幸な晩節になってしまうのは両方に共通します。

1 / 4

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ookawa-tomohiko_prof

大川智彦(おおかわ・ともひこ)

 佐野メディカルセンター理事。1969年、名古屋市立大医学部卒。放射線腫瘍医として (がん) 研究会病院放射線科などで勤務し、英国留学後、94年、東京女子医大放射線科主任教授に就任。その後、徳洲会病院グループ放射線科部門長、東京西徳洲会病院副院長・検診センター長、佐野メディカルセンター予防医療センター長などを歴任し、2019年より現職。

大川智彦「先手を打って、病に克つ」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事