認知症ポジティ部
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介護・シニア
認知症の高齢者 ヒートショックに注意!…冬の過ごし方のポイントは?
寒さが増し、体調を崩しやすい時期になりました。暖房器具をしっかり使い、適切な服を選ぶことが生活する上で大切です。認知症で苦手なことがあっても、自分で工夫したり、周囲が気にかけたりすることで、この冬を快適に過ごせるよう、ポイントを確認します。(小池勇喜、阿部明霞)
リモコン操作 図入りで説明…エアコン
「暖かい風が出るのは、どのボタンだい?」
11月下旬、茨城県北茨城市の菊池みねさん(82)は、ケアプラン作成を担当する株式会社「夢なかま」のケアマネジャー、加藤佳代さん(54)の訪問の際にエアコンのリモコン操作の方法を尋ねた。
「暖房は、このオレンジのボタンを押してくださいね」と、加藤さんはボタンの色の違いでわかりやすく説明。温度設定のやり方なども一緒に確認した。
高齢になると、機械の使用が苦手になるケースがある。特に、エアコンや暖房器具のような一年中使い続けることのない家電は、間が空くことで操作を忘れたり、使うことを思いつかなくなったりしがちだ。リモコンなどの小さな字が見にくくなるという問題もある。
使い方や適切な設定温度を改めて確認して、冬場に暖房器具を活用できないような事態は避けたい。
「リモコンのどのボタンを押せばいいのか、家族やヘルパーさんに図入りで書いてもらっておき、操作する時に確認する方法もある」と加藤さんは話す。
菊池さんは、大切な物をしまった場所を忘れてしまうことが時々あるという。リモコンがなくならないように、居間の机の上など、いつも置く場所を決めておくのもよいだろう。
冬物 取りやすく整理…服装
日々の服装を適切に選ぶことも大切だ。
神奈川県鎌倉市内で一人暮らしをする認知症の女性(87)は、家の中でじっとしているより活動する方が好きだという。デイサービスに週3日通い、他の日も友達に会ったり、買い物をしたりと外出の機会は多い。
でも、「日中の暖かさにつられて、コートなど防寒具を忘れて出かけてしまうことがある」という。朝晩、かなり冷え込む日もあるため、かかりつけ医には「肺炎などになる恐れがあるから、外出時の服装に気をつけて」と言われている。
女性は「一人で生活しているから、自分で気をつける。寒ければ、襟巻きとか着る物で調節して出かけようと思う」と意識している。
ただ、認知症の症状で、暑さ、寒さを感じにくくなる場合もある。近くに住む女性の娘(49)が訪ねると、肌寒く感じるような気温でも窓が開いていたり、薄手の服を着続けていたりと、「寒くないのかな」と心配になる場面もあるという。
そこで、女性の娘は、季節に合わなくなった衣服を押し入れの上の方に片付けた。冬用の衣服は女性が使いやすいようにと、「セーター」「カーディガン」などとラベルを付けたベッド下の収納に整理して入れた。
「母が自分で気づけないことや用意できない物は、時期を見て家族が調えて、安全に過ごせるようにしている」という。
「浴室暖かく」念押しの貼り紙…お風呂
「冬は、お風呂で倒れてしまう人が多いから、入る前に浴室を暖めましょう」
茨城県かすみがうら市の女性(90)宅で、居宅介護支援センター「センチュリー石岡」のケアマネジャー、村山知彦さん(43)が、浴室に付いている暖房機能のボタンを押してみせた。
暖房による温度の調整は浴室や脱衣所でも大切だ。温かい湯船とその周辺の大きな温度差で体調不良が起きる「ヒートショック」の心配があるからだ。
女性は認知症や筋力低下で要介護2。週4日利用しているデイサービスで入浴する場合は職員が見守ってくれるが、「お風呂に入るとぐっすり眠れるから」と一人暮らしの自宅でも入浴することがあるという。
村山さんは一緒にボタンの位置を確認し、「入る前に『暖房』を押す」と繰り返した。念のため、ボタンの近くの壁に、「お風呂をくむ前に『暖房』を押して下さい」と貼り紙もした。
浴室に暖房機能が付いていない場合は、シャワーでお湯を出し続けるなどして湯気で暖める方法もある。脱衣所向けの暖房器具も市販されている。
村山さんは「自宅でお風呂に入る人は、浴室や脱衣所を暖めてしっかりヒートショック対策をしてほしい。一人暮らしなどでは、気分が悪くなった時に気付いてくれる人がいないケースも考えられるので、デイサービスを利用しているなら、そこで入浴するのが安心だと思う」と話す。
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