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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

高1の男子生徒が、カフェインを過剰服薬して救急搬送…オーバードーズを重ねる子どもに、大人がすべきことは?

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カフェインを過剰摂取した男子高生…死ぬためではなく、不登校を乗り越えるため

 かぜ薬やせき止めなどをドラッグストアや通販で購入し、オーバードーズ(過量服薬)に至る若者が最近増えています。病院から処方された薬ではない、身近な医薬品が使い方次第で生命に影響を与える危険性があるので注意したいものです。

 今回はカフェインを過剰摂取した男子高校生を紹介したいと思います。

 直樹君(仮名)は両親、妹の4人家族。会社員のお父さんは単身赴任で、お母さんはパートタイムの仕事に出ています。両親とじっくり話をする機会は、これまでほとんどありませんでした。

 発達の遅れはなく、手のかからない子でした。幼稚園ではおとなしく、先生から言われたことをきちんと守っていました。自宅ではミニカーを並べて一人で遊ぶことを好みました。小学校時代もおとなしい子でしたが、仲良しの同級生は数人いたということです。

 中学校入学後は、友だちがなかなかできず、クラスでは孤立していました。他の生徒と廊下ですれ違った際に、いきなり足をかけられて転ぶといういじめに何度か遭い、担任の先生に相談しています。その後、中学2年生の後半から学校を休むようになり、たまに家に帰ってきたお父さんは、どうして登校できないのかと叱っていました。

 何とか高校入試を受けて、第1志望校に無事合格。高校入学後、頑張って登校していましたが、1年生の5月の連休明けから教室にいることが怖くなり、学校を休むようになりました。両親には、休んでいるわけを話すことはありませんでした。その後、6月になって、直樹君はドラッグストアで購入した、眠気やだるさの改善薬であるカフェイン製剤を過剰に摂取し、吐き気がひどくなって救急車で病院に運ばれ、集中治療室(ICU)に入院しました。

吐き気をもよおしながらも語ってくれた経緯は

 入院3日後、症状が落ち着いてから、これまでの経緯について、直樹君は時々吐き気をもよおしながら語ってくれました。

 「僕は中学校まで不登校だったので、高校からは友だちも作り、勉強も頑張ろうと思っていました。でも、高校に入学すると、教室内の同級生が自分のことをじろじろ見ているように感じたり、陰で悪口を言われたりしているように思えてしかたありませんでした。親に相談したら迷惑をかけると思い、誰にも相談しませんでした。その時、カフェインの入った薬を飲むと、気分がよくなり、元気になるというネットの情報を知りました。それで、近所のドラッグストアでカフェインの入った薬を2箱買って、たくさん飲んだのです。死にたかったのではなく、“勢い”をつけて登校しようと思ったのです」

 ベッドの上で泣きながら、こう話してくれました。

 入院5日後には、ICUから精神科病棟に移りました。主治医と両親とが頻回に面接するなかで、両親は直樹君のつらかった状況を少しずつ理解してくれるようになりました。入院14日目、直樹君は退院し、2週間に1度の通院を続けています。

 夏休み明けから通信制高校に転学し、現在は元気に通学しています。通信制高校の若い男性の担任が親身になって直樹君の相談に乗ってくれています。また、オンラインゲームを一緒にする同級生の友だちができたということを、うれしそうに外来診察室で話してくれました。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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