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乳幼児に多い「インフルエンザ脳症」 今冬のインフルでは起こりやすい?…119番が必要な症状は

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 今年の冬は、3年ぶりに季節性インフルエンザの本格的な流行が予想されています。乳幼児の場合、生死に関わることもある「インフルエンザ脳症」になる恐れもあるので、早めに小児科を受診してください。手洗いやうがいなど、新型コロナウイルス感染症と同様の基本的な感染対策に加え、ワクチンの接種も検討しましょう。(石川千佳)

脳に激しい炎症

 インフルエンザ脳症は、体に入ってきたウイルスを攻撃する免疫が過剰に働くことで、脳に激しい炎症などが起き、腫れが生じる病気です。

 患者の多くは乳幼児で、発熱後、数時間から1日程度して発症することが一般的ですが、数日以上たってから発症することもあります。けいれんや意識障害、異常な言動が主な症状です。

 流行規模にもよりますが、年間100~300人が脳症になるといわれます。最近のデータでは約7割は治療で良くなりますが、約2割は 麻痺まひ や知的障害、高次脳機能障害などの後遺症が残り、6%程度の人が亡くなっています。

 インフルエンザと診断されて、けいれんが5分以上続く場合、けいれん後も意識が戻らない場合は脳症の可能性があるので、迷わず救急車を呼びましょう。大きな声で名前を呼んだり体を揺すったりしてようやく目を開ける程度でも、救急受診してください。

 異常な行動や言動が1時間以上続く時もすぐに受診をしてください。自分の手を食べ物だと思い込んでかんだり、急に怒り出したりするなど、普段とは明らかに異なる言動がないか、よく観察しましょう。

入院治療が原則

 脳症の場合は、入院治療が原則となります。特効薬はないので、まずは水分補充や酸素投与、けいれんを抑える治療で全身の状態を安定させます。同時に、タミフルやイナビルなどの抗ウイルス薬を早期に投与し、インフルエンザによる発熱や症状を改善させます。

 大量のステロイドやガンマグロブリンという薬を投与し、過剰な免疫反応や炎症を抑える治療や、脳の神経細胞を保護するために体全体を冷やして平温(36度)を維持する「脳平温療法」をすることもあります。

 国内では、新型コロナの水際対策で過去2年、インフルの感染者数が少ない状態が続きました。しかし、水際対策が大幅に緩和された今年は、3年ぶりの大流行が懸念されています。

 手洗いやうがい、マスク、消毒など、新型コロナと同じ感染症対策を徹底しましょう。

 その上で、インフルエンザのワクチン接種を検討してください。生後6か月から接種が推奨されています。ワクチンは脳症の発症を完全に防ぐことはできませんが、インフルの発症や重症化のリスクを下げることで、脳症が起きるリスクを下げることができます。

 大阪市立総合医療センター小児脳神経内科医長の九鬼一郎さんは「今年はインフルエンザA型の流行が予想されます。脳症を起こしやすいタイプで、乳幼児のいる家庭では警戒度を上げてください。特に地元の保育園や幼稚園でインフルエンザが流行している時、子どもが発熱した場合は真っ先にインフルエンザを疑い、早めに小児科を受診しましょう」と話しています。

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