医療大全
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続・コロナ禍の傷痕<4>苦労続き…でも喪失感深く
東京の下町に住むショウコさん(83)が、 籐 椅子に手を添え、小さな庭を眺める。昨年5月、面会制限下の病院で亡くなった夫(享年86)は、この椅子で過ごす時間が好きだった。
糖尿病。胃がん。肺炎も繰り返し、病院と縁が切れない。2人で過ごした晩年の13年間は、認知症も進んだ。突然、怒り、 怒鳴 り、暴れる。妻の浮気を疑う。部屋のあちこちで排便する。最後の3年は、会話も成り立たなかった。
大恋愛の末に結婚し、町工場を営む夫の家に嫁いだが、結婚に反対した義父母は嫁につらく当たった。長男である夫はかばってくれない。「女中扱い」のような暮らし。後継ぎを期待されたが、女児が3人生まれ、三女は小児がんを患って生後9か月で逝った。
13年後に夫が決断して家を飛び出し、2人は地元の小中学校で働いた。夫50歳、ショウコさん45歳の時に今の家を建てた。認知症が進み始めた夫が、一度だけこう言ったことがある。「2人でつくった家だから。お母さんの力があったから」。ほめてくれたのか。
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