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大川智彦「先手を打って、病に克つ」

医療・健康・介護のコラム

75歳でアルツハイマー型、88歳沖縄旅行、90歳富士登山を実現させた「前向きさ」と「家族の献身」

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 2022年もラストスパートです。国内外で予想もしなかった大きなニュースが相次いだことで、長く記憶に残る1年だったように思います。

 記憶といえば、日本でいち早く認知症を扱った有吉佐和子さんの小説「 恍惚(こうこつ) の人」が刊行されたのは1972年のことでした。ちょうど半世紀が過ぎ、医療技術の飛躍で長寿社会が到来しましたが、引き換えに認知症の増加が重大な課題になっているのはご存知の通りです。残念ながら、認知症を治す「決定的な治療法」はまだありません。ただ、進行を遅らせる可能性がある「薬」、それに生活上の「知恵」はあります。だからこそ、早期発見が一丁目一番地です。認知症の初期に見られる症状を理解し、ご本人、それにご家族が「ひょっとしたら」と気付くことが、長寿社会における重要な意味を持ちます。

「人生なるようにしかならない」と

75歳でアルツハイマー型、88歳沖縄旅行、90歳富士登山を実現させた「前向きさ」と「家族の献身」

 今回は激動の昭和、それに平成と令和を生き抜いてきた女性T・Sさん(94)の話です。

 彼女が認知症と診断されたのは19年前、75歳のときでした。その2年前に脳 梗塞(こうそく) を発症し、後遺症もなく回復したものの、徐々に時間や日付の感覚がおかしくなり、預金通帳の保管場所を忘れるなどの症状が出るようになりました。

 T・Sさんの長女が看護師として勤めている病院を受診したところ、初期の認知症と診断されました。主としてアルツハイマー型であり、脳梗塞の既往があったことから、脳血管性も混在した「混合型認知症」も考えられました。

 ご本人はまだまだ元気いっぱいだったため、さぞショックを受けたかと思いきや、「人生なるようにしかならない」と、ケロッとされていたそうです。認知症と診断されると、ショックでふさぎこんでしまい、悲観的な思考ループに陥って、症状を悪化させてしまう患者さんも少なくないのですが、T・Sさんの前向きな天真 爛漫(らんまん) ぶりは、後にポジティブな効果をもたらすことになります。

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大川智彦(おおかわ・ともひこ)

 佐野メディカルセンター理事。1969年、名古屋市立大医学部卒。放射線腫瘍医として (がん) 研究会病院放射線科などで勤務し、英国留学後、94年、東京女子医大放射線科主任教授に就任。その後、徳洲会病院グループ放射線科部門長、東京西徳洲会病院副院長・検診センター長、佐野メディカルセンター予防医療センター長などを歴任し、2019年より現職。

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