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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

医療・健康・介護のコラム

体がだるい、フラフラする お酒を飲んでないのに顔が赤い…そのわけは怖い「一酸化炭素中毒」だった

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 寒さが強くなってきたある日、ふだん農作業もバリバリやっている70代の男性が「体がだるい」「フラフラする」といって、奥様に連れられて外来を受診しました。

 歩行も自力で可能ですが、話していると確かに少し違和感を感じるたどたどしさです。顔色はお酒を飲んだかのようにほんのり赤みがかかっています。同伴の奥様は「普段と全然違う。飲んでいないのにお酒飲んでいるみたい」ということをしきりに繰り返します。

「年齢のせい」「疲れのせい」と決めつけない

体がだるい、フラフラする。お酒を飲んでないのに顔が赤い…そのわけは怖い「一酸化炭素中毒」だった

 さて、この患者さんに私たちが医療従事者として確認しないといけないことは何でしょうか。

 年齢のせい、農業の疲れなどと結論づけるのは早計です。特にこれからの時期で注意しないといけないのは「一酸化炭素中毒」という病気です。一酸化炭素は不完全燃焼で発生する無色無臭の気体ですが、これを吸うことで頭痛,吐き気,筋力低下,狭心症,呼吸困難,意識消失,けいれん発作, 昏睡(こんすい) など様々な症状を引き起こし、場合によっては死に至ります。冒頭のお酒を飲んだような顔の赤みも、実は一酸化炭素が血液と結合した結果、生じる現象なのでした。

問題の根源を推理する

 一酸化炭素中毒は私たち医療従事者にとって「疑わなければ診断できない」非常に重要な病気です。血液ガスという検査を行って血中の一酸化炭素の濃度を測定する必要があり、また診断がつけば入院下での十分な酸素投与が必要となります。ですが、検査が遅れ、時間がたてばたつほどに診断が困難になってしまうのです。

 火災などなら積極的に疑いますが、特に注意すべきは、冬期では暖房器具の影響です。石油ストーブや地域によってはたきぎ、炭を使用するところも少なくないと思います。そこに換気不足などが加わると、とたんに一酸化炭素中毒の発生リスクは高まります。

 目立つ症状に対する手当てや症状を軽くする処置、投薬は重要ですが、問題の根本になるものがないか考え、推理することは再発予防の視点からも非常に重要なことだと考えます。

 冒頭の患者さんは幸い、軽症で特に後遺症もなく帰宅することができました。ですが背景に、「一酸化炭素を発生させる暖房器具の使用」「部屋の換気不足」という二つの因子が隠れている場合、その点についての十分な指導や配慮を行わなければ悲劇が繰り返されます(場合によってはもっと重症になって来院されたり、また火事になったりという別の事象が発生することも出てくるかもしれません)。

 高齢であれば今後の暖房器具の管理や認知機能についても考慮しておく必要があるでしょう。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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