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流産や死産を経験後、「職場に迷惑をかけた思いや復帰を焦る気持ち重なる」…復職支援に課題

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 妊娠した人の15%前後が流産を経験するとされ、妊娠12週以降に胎児が亡くなる死産は、昨年は約1万6000人に上った。心身への大きな負担を和らげる取り組みが広がる中、働きながら流産や死産を経験した人に対する支援も課題になっている。(沼尻知子)

労基法の「産休8週間」周知されず

流産・死産後の復職を支援…自助グループで情報交換

 「調べても、死産の後の職場復帰についての情報は見つからなかった。復帰を急ぎすぎてしまった」

 5年前、妊娠18週で死産を経験した神奈川県の会社員、藤川なおさん(39)は振り返る。

 順調に出産できると考えていた安定期の突然の出来事。赤ちゃんを失ったショックに、急に仕事を休んで迷惑をかけたという思いや復帰を焦る気持ちも重なった。適切な相談先を見つけることはできなかった。

 死産も対象になる産後休業(産休)の後に復帰したが、うつ病と診断され、さらに3か月仕事を休むことになった。「死産後の心身の状態や職場復帰の注意点を知っていれば、病気になるほど落ち込むことはなかったかもしれない」と話す。

流産・死産後の復職を支援…自助グループで情報交換

働く女性の流産や死産について情報発信する「iKizuku」を結成した藤川さん(右)と星野さん

 流産や死産の後は出血がしばらく続いたり、ホルモンバランスが崩れたりして体への負担が大きい。妊娠4か月以降(12週以降)の死産では、労働基準法で原則8週間の産休が義務付けられているが、十分に知られているとは言えない。

 3年前に妊娠15週で死産した東京都の会社員、星野よしみさん(37)は「自分も上司も、産休の対象になると知らなかった」と話す。

流産・死産後の復職を支援…自助グループで情報交換

 労務の担当部署に問い合わせたことで産休を取得できたが、「流産や死産は話題にしにくいためか、必要な情報が、当事者や勤務を管理する立場の人に届いていない」と感じたという。

 SNSがきっかけでつながった藤川さんと星野さんは昨年、流産・死産を経験した働く女性を支援する自助グループ「iKizuku(イキヅク)」を作った。

 当事者が体験を共有する座談会や、企業や自治体の担当者向けのセミナーを開くなど、情報発信を開始。「心身の状況や、今の自分にできる業務を上司に伝える」など、職場復帰に向けてのポイントをまとめたハンドブックも作成した。

 星野さんは「安静にすべき時に、赤ちゃんを失った喪失感の中、制度を調べなければならないのは負担が大きい。わかりやすい周知が必要だ」と訴える。藤川さんも「働く女性にとって、仕事にどう復帰するかは切実な問題。心身の状態などを企業側も知ることで、相談しやすい職場が増えてほしい」と期待している。

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