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C型肝炎 新たな飲み薬登場 軽度の慢性肝炎でも使用可能に
ウイルスの感染で引き起こされるC型肝炎は、肝臓がんのリスクを高めます。新しい飲み薬の登場で、ウイルスを駆除し、これまで治療が難しかった重い肝硬変も治せるようになりました。(小山内裕貴)
肝臓がんのリスク
C型肝炎は注射器の使い回しなどウイルスに汚染された血液を通して感染します。ウイルスは肝細胞の中で増殖し、肝臓の組織が傷む慢性肝炎を起こします。ほとんど自覚症状のないまま進行し、数十年後には傷んだ組織が線維化して肝臓が硬くなる肝硬変となり、肝臓がんになる確率も高まります。肝硬変が悪化すると、肝臓の機能が著しく低下した非代償性と呼ばれる状態になり、おなかの中に水がたまったり、意識障害が表れたりします。
1989年に米国の研究者によって原因ウイルスが発見され、治療法が進展していきます。この3年後にはウイルスを攻撃するインターフェロン注射が始まりました。一定の効果があった一方で、発熱や頭痛、全身の 倦怠 感などの重い副作用がネックとなりました。
2010年代になると、ウイルスの増殖を防ぐタイプの薬が登場し、効果の高い飲み薬「ハーボニー」が15年に発売されました。ただし、非代償性には使えない課題が残りました。
ウイルス増殖阻止
そうした重い肝硬変や従来の薬で効果がなかった患者の治療を対象とする飲み薬として19年に登場したのが「エプクルーサ」です。2通りの作用でより強力にウイルスの増殖を阻止するのが特徴です。ウイルスの複製に必要な遺伝子とたんぱく質の合成を止めます。
今年8月からは、軽度の慢性肝炎から使えるようになりました。1日1回1錠を3か月服用することで、非代償性を含めほとんどの患者でウイルスを排除できます。
佐賀県に住む80歳代の女性は、過去の血液検査でC型肝炎と診断されました。しかし、自覚症状もないことから治療をしていませんでした。医師に勧められて8月末からエプクルーサの服用を始めました。11月中に治療を終える見込みです。「当初は治療に不安がありましたが、体調の変化を感じることもなく安心して日常生活を送れています」と話します。
治療を担当した江口病院(佐賀県小城市)の医師、江口有一郎さんは「慢性肝炎の段階でも肝臓がんになるリスクは健康な人より高いので早めに治療を受けてほしい」と呼びかけます。
厚生労働省研究班によると、国内のC型肝炎患者は100万~150万人いると推計されています。このうち治療を受けたC型肝炎患者は約50万人にとどまります。感染を知りながら治療を受けていない人は25万~75万人、感染を認識していない人は30万人いるとみられています。
患者から相談を受け付けているNPO法人東京肝臓友の会が、治療を受けていない理由をたずねたところ、「かかりつけ医が大丈夫と言っている」「症状がない」といった回答が目立ったといいます。事務局長で元患者の米沢敦子さんは「今は治療の選択肢が増えているので気になる人は相談してほしい」と話しています。同会の相談窓口は(03・5982・2150)。
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