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介護保険制度見直し 高所得者の保険料引き上げを検討…「要介護1、2」の人へのサービス 制度から切り離す案も

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 10月31日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、介護保険制度の「給付と負担」がテーマとなった。一定の所得がある65歳以上の高齢者の保険料引き上げや、サービス利用時の自己負担(原則1割)が2割となる対象の拡大などが検討課題として示され、意見が交わされた。(野島正徳)

介護保険制度の見直し…高所得者保険料 引き上げ検討

 介護保険部会では、2024年度の介護保険制度改正に向けた議論が行われている。31日には、厚労省から介護保険料の見直しを検討する方針が示された。

 65歳以上の高齢者が払う介護保険料は、市区町村ごとに基準額が決められ、全国平均は現在、月額6014円。個々の保険料は、所得によって基準額の0・3~1・7倍と段階的に設定されるのが原則で、高所得者ほど多く負担する仕組みだ。低所得者には19年10月の消費増税に伴う軽減措置が導入されている。

 厚労省は、一定の所得のある人の保険料を引き上げ、低所得者の保険料を引き下げることを検討している。引き下げに伴う減収分を、高所得者の負担増による増収分で穴埋めすることで、所得に応じて保険料を負担する「応能負担」を強化する。高齢者間の所得の再分配を進め、制度の持続可能性を高めたい考えだ。

 部会長代理の野口晴子委員(早稲田大教授)は、40年度にかけて介護需要の増大が予想されることから、「高所得層の保険料引き上げは、早急に検討するべきだ」と強調した。

 一方、津下一代委員(女子栄養大特任教授)は「元々多く負担している人に、負担能力に応じてより多くの保険料支払いを求めることになる」として、丁寧な議論を求めた。

自己負担2、3割 対象拡大も議論

 部会では、介護サービスを利用する際の自己負担割合についても、見直しを検討する方針が示された。自己負担割合は原則1割だが、所得が「一定以上」(単身で年収280万円以上など)で2割、「現役世代並み」(同340万円以上など)で3割の負担となっている。

 厚労省は2割負担、3割負担を導入した経緯や、2、3割負担の対象者は要介護認定者全体の約9%(今年3月現在)にとどまる状況を説明。2、3割負担となる所得区分の基準を見直すことを検討課題として提示した。

 河本滋史委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「低所得者に配慮しつつ、『原則2割』や3割負担の対象拡大を考えてもいいのでは」と語った。これに対し、斎藤訓子委員(日本看護協会副会長)は「コロナ禍や物価高騰などの社会情勢を踏まえて、慎重に検討するべきだ」と指摘した。

 このほか、介護の必要度が比較的低いとされる「要介護1、2」の高齢者への生活援助などを、市区町村による支援事業に移行して介護保険から切り離す案や、ケアプラン(介護計画)の有料化についても議論された。

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