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うつ病で離職や休職する人が増加 復帰するには?…「リワーク」の取り組み広がる
うつ病などになり、離職や休職をする人が増える中、復職に向けて精神的なケアなどを受ける支援「リワーク」の取り組みが広がっている。人との接し方を学んだり、規則正しい時間で生活したりすることで、症状の改善や再発防止に効果を上げている。(平井翔子)
感情や行動の癖 改善
10月中旬、札幌市中央区の診療所「北海道リワークプラザ」の一室に、うつ病や適応障害などの精神的不調から休職した16人が、職場復帰を目指して「医療リワーク」と呼ばれるプログラムに集っていた。リワークは「リターン・トゥ・ワーク(仕事に戻る)」の略称だ。
プログラムでは、患者が話し合いを通してパソコンで資料を作成したり、日常場面を「寸劇」で演じたりする。集団の中での患者の行動を、医師や看護師などが観察して症状を診断したり、患者自身が感情や行動の癖を把握・改善したりする「集団心理療法」の一つだという。
プログラムで、規則的な生活リズムも重視されている。職場復帰に向けて体を慣らすためで、一般社会人の勤務時間帯に合わせた平日午前9時~午後5時に行われている。
精神疾患は、職場の過重労働や人間関係の悪化で起こる場合が少なくない。ミスをした時に過度に自分を責めてしまったり、仕事を断れなかったりして、ストレスを抱えてしまうことがあるという。
この日のプログラムで患者たちは、「誰か仕事を交代してくれませんか」と周囲に頼ったり、自分の殻にこもらずコミュニケーションを取ったりして、自身の「苦手」と向き合った。
うつ病による2回目の休職中で、3週間前からこの診療所に通う27歳の男性は、仕事の負担や家庭の事情が重なって体が動かなくなり、食欲不振にも陥ったという。「職場で“良い人”でいようと頑張りすぎてしまったが、リワークを通じ、自分の希望を押し殺す必要はないと思えるようになってきた」と話す。
休職増加 高まる需要
厚生労働省の2021年の調査によると、精神的不調で連続1か月以上休職した人がいた事業所の割合は8・8%で、2年間で2・1ポイント増加しており、リワークの需要が高まっている。
プログラムを受ける期間は、人によって異なるが、3~7か月の場合が多いという。同診療所を運営する横山太範医師は、「時間をかけて、自分がどんな時に怒り、落ち込むかなどを知り、気持ちを自己管理できるようになれば、ストレスを軽減でき、社会生活が随分楽になる」と効果を強調する。
一般社団法人「日本うつ病リワーク協会」(東京都)による12年の調査によると、リワークを利用した後に職場に復帰した場合、3年後の就業継続率は7割以上だったのに対し、リワークを経ずに復職した人の場合、その割合は2割にとどまっていたという。
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