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脳MRI画像データ大量解析で健康状態を可視化…第4回ヘルスケアベンチャー大賞
アンチエイジング(抗加齢)の優れたビジネスプランやアイデアを表彰する「第4回ヘルスケアベンチャー大賞」(日本抗加齢協会主催、日本抗加齢医学会共催、読売新聞社、三井不動産など後援)の最終審査会と表彰式が10月21日に開かれた。東京都中央区の会場とオンライン視聴を合わせて、全国の医療、製薬、ヘルスケア分野の関係者ら約390人が参加した。
大賞は株式会社エム(森進社長)
24件の応募の中から、大賞には、株式会社エム(東京)の「脳MRI画像解析に基づく全脳の構造別体積・健康状態の可視化、認知症予防」が選ばれた。
同社は米ジョンズ・ホプキンス大学医学部放射線科教授の森進氏らが2021年6月に設立。大学で開発したAI技術と、健康診断、脳ドックを通じて数十年にわたって蓄積された、病気ではない状態の磁気共鳴画像(MRI)データを活用して、脳の健康を可視化する仕組みを開発。既に5施設10万件以上の大量解析を進めている。
認知症全体の6~7割を占めるとされるアルツハイマー病は、神経細胞が傷ついて脳が萎縮し、軽度認知障害(MCI)を経て発症する。この画像解析技術によって、「実年齢に対して自身の脳年齢がどれぐらいか」「脳の部位別萎縮度」「萎縮の時系列データ」などが示され、医療現場で予防行動などのアドバイスが可能になるという。
来年には、投資家から資金調達を受けるフェーズが「シリーズA」に移行する見通しで、着実な成長を見込んでいる。森氏は「既存の脳ドックは受診者数が限られる。将来はその枠を超えて、国民全体が気軽に受診できる脳健康管理システムの構築を目指したい」と目標を語った。
大賞には賞金100万円が贈られるほか、上位入賞者は起業支援サービスなどを受けられる。
学会賞は株式会社ASメディカルサポート(香月信滋社長)
大賞に次ぐ「学会賞」には、株式会社ASメディカルサポート(福岡)の「再生医療(幹細胞治療)と再生医療リハビリによる脳血管障害を持った重度要介護者のアンチエイジングへの希望」が選ばれた。
腹部の脂肪を採取して培養した幹細胞を生きたまま分離した状態で投与して組織を修復・再生する治療と、リハビリを重ねるもの。身体機能回復だけでなく、見た目の改善を希望する患者が増えたという。
登壇した、培養統括マネジャーの桜井由美さんは「患者が『つえを持たずに歩けるようになりたい』『ジャケットを着られるようになりたい』などと意欲を持ってリハビリに取り組むようになり、服装も若々しくなるなどアンチエイジングの効果も出ている」と発表した。
これに続く「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」は以下の3社が選ばれた。
InnoJin株式会社 | ドライアイ診断補助用スマートフォンアプリケーションの開発 |
株式会社TearExo | 予防医療を実践する、涙を使ったヘルスケア・インフラ構築 |
株式会社ナールスコーポレーション | 「ナールスゲン®」およびナールスゲン含有化粧品の販売 |
また、これらの企業のプランに加え、個人の優秀なアイデアも表彰された。
アイデア賞
岡崎裕(横浜薬科大学) | 現代の「脈診」技術で健康日本創出に貢献するパーソナル脈波装置 |
(※詳細は、第4回ヘルスケアベンチャー大賞「結果発表」のページをご覧ください)
審査委員長の山田秀和・日本抗加齢医学会理事長は「大賞は、我が国の重大な問題である認知症に対して、大量データ解析による『目に見える』解決策を示した点を評価した。全体的に、各社の発表内容のレベルが毎回上がっているうえ、資金調達や株式上場の計画を具体的に示す会社が増えている。起業を目指す若い人たちにとって大いに参考になるだろう」と締めくくった。
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