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高血圧を治療する「アプリ」ってどんなもの?…科学的根拠がないものには要注意

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 保険診療で使える高血圧の「治療用アプリ」が9月に発売されました。医師の指導だけでは効果が薄いケースでも、デジタル技術を活用して患者の意識や生活習慣の変化を促し、血圧を低下させる効果が期待されています。(松田晋一郎)

国内に患者4300万人

 血圧は心臓が収縮・拡張した時に血管の壁にかかる力のことです。塩分の取り過ぎで体内の水分が増えたり、動脈硬化が進んだりすると高くなり、診察室で最高血圧が140以上、最低血圧が90以上になった場合を高血圧と呼びます。

 自覚症状はありませんが、進行すると脳卒中や心臓病、腎臓病などを引き起こします。国内の推計患者は4300万人です。治療の2本柱は、減塩を中心とした生活習慣の改善と血圧を下げる薬の服用ですが、治療を続けて血圧を上手にコントロールできている人は3割に届きません。

 背景には、医師の診察時間が数分程度と短く、患者の生活習慣の把握が難しいという事情がありました。

 この課題の解決に役立つと期待されているのが、患者がスマートフォンにダウンロードして使う治療用アプリです。医療ベンチャー企業「キュア・アップ」(東京)は9月、保険適用されたアプリの販売を始めました。保険が利くアプリは同社の禁煙用に続いて2例目です。

 医師からアプリが処方された患者は、毎日の血圧や食事、睡眠などを入力。そのデータを基にアプリは「塩分を減らし、薬味を使いましょう」などと助言を表示します。

 データは処方した医師にも共有され、診察時の生活指導に使われます。患者の負担額(3割負担)は初月は2910円、その後は月2490円です。

 兵庫県三田市の女性(48)は、健康診断で最高血圧が180超だったため、8月に治療を始め、9月からアプリも使っています。

 炭水化物を減らして毎日歩くことで4キロ・グラム減量し、最高血圧を正常値である130近くに下げることができました。「食事の写真を載せるなどSNS感覚で楽しみながら治療に取り組めます」と話しています。主治医の田場隆介さんは「生活習慣の変化がわかるので、きめ細かい指導ができる」と指摘しています。

学会が指針作成へ

 このアプリは、薬と同様に承認のために安全性と有効性を確かめる「治験」を行いました。アプリ活用と医師の生活指導の両方を行う集団を、生活指導だけの集団と比較したところ、3か月後には脳卒中や心臓病の発症リスクが10・7%、心不全リスクが54%低下することが期待できる血圧の低下が確認されました。

 医師で同社社長の佐竹晃太さんは「患者さんに正しい知識を学び、考え方や習慣を変えてもらうのが特徴です」と話しています。

 ただ、「アプリストア」に並ぶ多くのアプリには科学的根拠はありません。日本高血圧学会理事長の楽木宏実さんは、「根拠が不確かなのに、患者さんが『効果がある』と勘違いすれば、自分で血圧管理ができると思い込む不都合が生じかねません」と警鐘を鳴らしています。学会は2025年をめどに、デジタル技術を使った血圧管理の指針を作成する方針です。

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