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大川智彦「先手を打って、病に克つ」

医療・健康・介護のコラム

高血圧症の治療に薬は不可欠? 遺伝、加齢、肥満が原因の高血圧症を克服した50代女性の場合

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 天高く馬肥ゆる秋――。暑い夏を乗り切り、空気の澄んだ気持ちのいい季節を迎えると、食への意欲が大きくなってしまうのは、お馬さんだけの話ではありません。なんといっても、農家のみなさんが一生懸命に育ててくれた新米がテーブルに登場するのです。豊富な秋の味覚と一緒に、炊き立てのおいしいごはんを口にするたびに、日本で生活する幸せを実感しますよね。

 とはいえ、食べ過ぎてしまい、「天高く私も肥えた」となっては、スポーツをしたり、おしゃれをしたりなど、秋の楽しみが台無しになってしまいます。

 そして、もう一つ、気を付けたいのが塩分。炊き立てのおいしいごはんを、さらにおいしくしてくれるのは、栄養満点の魚や肉、野菜などを上手に調理した「日本のおかず」ですが、食べ過ぎれば肥満、そして塩分の取りすぎが目の前にちらつきます。

 そうなると気になるのが……血圧ですね。

健康診断は欠かさず受けてきたのに…

高血圧症の治療に薬は不可欠? 遺伝、加齢、肥満が原因の高血圧症を克服した50代女性の場合

 スーパーに出向くと、しょうゆ、みそ、漬物などはもとより、お総菜やカレー、ラーメン、スナック菓子などにまで「減塩」をうたった商品が並んでいます。カロリーや塩分を考えると、どうしてもカレーやラーメンは敬遠したくなりますが、あの味と匂いの誘惑には、なかなか勝てません(余談ですが、このコラム担当記者の一番の好物は、ラーメンをおかずにした白いごはんだそうです)。

 減塩への意識が広がってきた日本ですが、高血圧症の原因はそれだけではありません。というよりも、むしろ、「持って生まれた体質」に「加齢」が重なり、「肥満」や「過剰な塩分」がそれを後押しすると考えるのが妥当です。

 栃木県の市職員E・Sさんは、これまで健康診断を欠かしたことがない「優等生」の女性です。結婚歴はなく、現在は高齢の母親と同居しています。脳卒中で他界した父親には、肥満、糖尿病、高血圧症があったそうです。母親は肥満、糖尿病とは無縁ですが、高血圧症で、現在も薬を服用されているそうです。

 もう想像がつきますよね。E・Sさんは高血圧症の遺伝的要素を、両親から受け継いでいるのです。50歳で迎えた閉経後から体重が増え始め、3年前の2019年10月の健診で累積警告の限度を超えてしまいました。身長162センチ、体重72.4キロ、BMI:27.6、腹囲は92センチの肥満、そして血圧は174/102。心電図と心臓エコーは正常範囲でしたが、エコー検査の結果、右 (けい) 動脈にプラーク(コレステロールのかたまり)が認められました。動脈硬化測定検査(血圧脈波検査)、いわゆる「血管年齢検査」では年齢より10歳以上も高齢といわれてショックを受けたそうです。

 思えば、50代半ばで課長代理に昇進し、仕事も責任も重くなったころから、肥満傾向が強まったそうです。残業が増えて、遅い夕食が当たり前になり、総菜店やコンビニ、スーパーなどに頼ることが多くなったとのこと。それまでの健診でも、肥満傾向が指摘され、そのたびに父親が亡くなった原因が気にはなっていたそうですが、どうしても仕事優先となり、「そのうちに……」と体重管理を後回しにしてきました。時間の合間を見つけてヨガ教室に通ってみたこともありましたが、時間の制約が多かったことで、あっという間に挫折したそうです。

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大川智彦(おおかわ・ともひこ)

 佐野メディカルセンター理事。1969年、名古屋市立大医学部卒。放射線腫瘍医として (がん) 研究会病院放射線科などで勤務し、英国留学後、94年、東京女子医大放射線科主任教授に就任。その後、徳洲会病院グループ放射線科部門長、東京西徳洲会病院副院長・検診センター長、佐野メディカルセンター予防医療センター長などを歴任し、2019年より現職。

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