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野山や畑に生息するマダニに注意! かまれて発症する感染症増加…「日本紅斑熱」は早期治療が重要

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 春から秋にかけて屋外での活動時には、ダニが媒介する感染症に注意が必要です。このうちマダニが媒介する「日本 紅斑こうはん 熱」は近年、患者が増えています。治療が遅れると重症化して致死率が高まるため、発症後はすぐに医療機関を受診してください。(東礼奈)

なぜ起きる?

 ダニが媒介する感染症には、ツツガムシが媒介するツツガムシ病、マダニが媒介する日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあります。日本紅斑熱は、「日本紅斑熱リケッチア」という細菌を持つキチマダニやフタトゲチマダニなどにかまれることで、感染します。

 マダニは野山や畑、家の裏庭などに生息しています。シカやイノシシ、アライグマなどの野生動物や、通りかかった人に取り付いて吸血し、病気を媒介します。

 日本紅斑熱の患者は、1984年に徳島県で初めて報告されました。国立感染症研究所によると患者は増加しており、2017年以降は報告数が300人を超え、昨年は最多の486人でした。西日本で多く、関東でも報告されています。

どんな症状?

 マダニにかまれても痛くもかゆくもなく、気付かないケースが多いです。発症までの潜伏期間は2~8日で、発熱やかゆみのない発疹、頭痛、 倦怠けんたい 感など様々な症状が出ます。発疹は発熱の2~3日後から全身に広がり、四肢に目立つことが多いです。

 感染が疑われる場合は、マダニの刺し口のかさぶたや血液を採取して、リケッチアの遺伝子検査や抗体検査で診断します。治療はテトラサイクリン系の抗菌薬を点滴などで1~2週間投与します。19年は届け出時点で13例の死亡が報告されています。治療が遅れて多臓器不全をおこすと致死率は跳ね上がります。検査による確定診断前の早い段階から治療を始めることが何より重要です。

どう防ぐ?

 ワクチンはないので、マダニにかまれないよう注意することが第一です。

 野山に行くときは肌が露出しないよう服装に気をつけましょう。淡い色の服はマダニの付着に気づきやすいです。有効成分のディートやイカリジンが入った虫よけスプレーを服の上からもかけましょう。長時間活動する場合は数時間おきに使ってください。

 マダニは体の軟らかい部分を探して歩き回ると言います。帰宅後は必ず入浴し、頭部やわき、脚の付け根などにマダニが付いていないかくまなく確認しましょう。

 付着直後のマダニは払うと取れますが、しばらくするとセメント状の物質を出して口を固定します。1週間ほど血を吸い続けておなかがいっぱいになると離れます。無理に取ると頭部が残ったり、マダニを潰して病原体を人の体内に入れてしまったりする恐れもあるため、医療機関で処置してもらってください。

 りんくう総合医療センター総合内科・感染症内科の関雅之副医長は「マダニは刺し口が見つからなければ発疹が出る他の疾患との区別が難しく、治療開始が遅れれば命に関わります。住宅地の草むらなど身近な場所にも潜んでいるので、行動歴を医師に伝えてください」と話している。

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