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「手足口病」だけじゃない 子どもの感染症が増加…自粛生活で免疫なく 接触増影響か

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 新型コロナウイルスの感染第7波が猛威をふるった今夏、「手足口病」など子どもがかかりやすい感染症の患者も増えました。この2年余りの自粛生活で子どもたちに様々なウイルスに対する免疫がついていなかったところに、行動制限が緩和されて、人との接触が増えたことも影響したとみられます。(加納昭彦)

「手足口病」「RS」

 「この2年間落ち着いていた子どもの感染症が一気に流行した印象です」。東京都荒川区の上野小児科医院院長の上野正浩さんは今夏を振り返ります。

 同医院には7月上旬以降、発熱した乳幼児を抱えた保護者が殺到。診察は予約制ですが、飛び込みで来る人や「すぐに診て」と電話してくる人も多く、患者は多い日で平常時の3~5倍になりました。

 その半数以上はコロナでしたが、手足や口の中に発疹ができる「手足口病」や、発熱やせき、鼻水などの症状が出る「RSウイルス」、RSウイルスに似た症状の「ヒトメタニューモウイルス」も目立ちました。

 患者の多くは軽い風邪症状で済みますが、手足口病はまれに髄膜炎や脳炎を引き起こすほか、RSウイルスは、気管や気管支などが未熟な1歳未満の乳児は重症化しやすいため、注意が必要です。

 予防のポイントは、コロナと同様に、手洗いやうがい、手の消毒など基本的な感染対策です。ただ、特効薬はありません。解熱剤など対症療法で自然治癒を待ちます。

 同区内の30歳代の会社員女性は7月、長男(1)が41度の熱を出したため、同医院を訪ね、検査の結果、ヒトメタニューモウイルスへの感染が判明しました。長男はこの前週に手足口病の感染が判明したばかりで、女性は「これほど次々と感染症にかかるなんて」と驚いていました。

 国立感染症研究所(感染研)によると、全国約3000の小児科が報告した1医療機関あたりの手足口病の患者数は、8月7日までの1週間で3・34人。コロナが流行した2年間の同時期と比べると10倍以上でした。その後いったん減少しましたが、同28日までの1週間は3・32人となり、再び増加傾向です。

 都道府県別では、山形の10・79人をはじめ、宮城(8・81人)、北海道(7・09人)など東日本の7都道県が、警報レベルとなる5人を超えました。

 RSウイルスは昨年7月中旬頃をピークに大きな流行がありました。ヒトメタニューモウイルスについては、感染研が患者数を調査していませんが、一部の地域で患者が目立ったという声が上がっています。

 子どもの感染症の増加について、福島県立医大小児科准教授の橋本浩一さんは「過去2年間の自粛生活で、子どもは感染症の免疫がついていない上に、行動制限の緩和で人との接触が増えたことが影響している」と指摘します。

対症療法のみ

 日本小児感染症学会理事長で、長崎大教授の森内浩幸さんは「こうした感染症は発熱など、どんな症状でも対症療法しかありません。自宅で水分や食事をとり、十分寝ると回復します。ただし、意識がもうろうとするなど気になる症状があれば医療機関を受診してください」と話しています。

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