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「自立支援コーディネーター」が足りない…児童養護施設や里親から巣立った人をどう支えるか

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 児童養護施設や里親などの社会的養護から離れたケアリーバーを支える「自立支援コーディネーター」の不足が深刻だ。子どもに寄り添う多様な専門職についても、施設から不足を指摘する声が上がっており、人材確保が重要課題となっている。(平井翔子)

■巣立ちの重圧

寄り添う専門職 確保急務

児童養護施設のオンライン見学会に出席し、やりがいなどを語る梛橋さん(中央)ら職員たち

 父親による虐待のため一時保護され、10歳から18歳まで東京都内の児童養護施設で暮らした女性(20)。18歳で施設を出る約1年前に、「自立支援コーディネーター」と出会った。

 コーディネーターは、自立後の進路や必要な支援を一緒に考えてくれる専門職だ。短期大への進学や利用する奨学金、相談先の支援団体などを盛り込んだ「継続支援計画」を女性のために作成してくれた。

 現在、短期大で保育を学んでいるこの女性は「漠然としていた目標が明確になり、自信がついた。計画がなかったら、進路や一人暮らしで行き詰まり、路頭に迷っていたかもしれない」と話す。

 彼女のように施設を巣立つ若者の中には、「早く自立しなくてはならない」と1人で悩みを抱え、自立後、孤立や経済的困窮に陥る例もある。こうした状況を防ぐためには、コーディネーターと話し合い、将来に向けた計画を準備することもカギとなる。

■手薄な実態

寄り添う専門職 確保急務

 コーディネーターの配置は、国が2017年に始めた社会的養護自立支援事業の一環で、都道府県や児童相談所のある自治体が、社会福祉士などの資格や経験を持つ人を採用する。

 しかし、コーディネーターを配置するかどうかは自治体に任されている。京都市のように全ての施設に配置した自治体もあるが、厚生労働省が21年に公表した調査によると、児童相談所がある全国73自治体のうち3割超はコーディネーターが不在だった。

 北海道では、わずか2人のコーディネーターが、道内全域の施設の子どもの支援計画やケアリーバーの相談に応じている。20年度に作成した支援計画は約150件に上り、2人で対応するには限界がある。

 コーディネーターの一人、安田徹さん(45)は「『一緒に考えてくれる大人がいる』と実感してもらうためにも、繰り返し対話し、困った時に機敏に反応することが大事」と話し、コーディネーターの増員を含めた支援の強化を訴える。

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