Dr.夏秋の毒虫クリニック
医療・健康・介護のコラム
樹上から無差別攻撃! 肌に刺さるチャドクガの毒針毛30万本
ケムシの大半は無毒
暮らしの中で虫と触れあう機会が減っているためか、男女を問わず、虫が苦手という人が増えているそうです。ゴキブリや蚊など、嫌われ者は数々いますが、ケムシもその筆頭格といっていいでしょう。
ケムシは、チョウやガの幼虫です。人から敬遠される理由は、なんといってもそのビジュアル。赤や黄、緑、黒……派手な配色のボディーにモッサモサの毛をまとい、見るからに毒々しい姿で威嚇してきます。しかし、そんな見た目に反して、実はほとんどのケムシは人畜無害なのです。
日常生活の中で目にする機会の多いケムシの中で毒を持つのは、チャドクガ、ドクガ、マツカレハ、ヒロヘリアオイラガ、タケノホソクロバなど、数種類に限られます。これらのうち最も身近で、極めて厄介なのがチャドクガです。
ツバキやサザンカに生息
チャドクガの成虫は、羽を広げると25mmくらいの黄色あるいは茶色の小さなガで、本州、四国、九州に生息します。1年に2回、6月頃と10月頃に羽化し、ツバキ、サザンカ、チャノキなどのツバキ科の植物の葉に卵を産みます。
その卵がふ化し、幼虫が姿を現すのは、5~6月と8~9月の年2回です。今まさに、今年2回目のシーズンまっただ中! 日本各地のツバキやサザンカの葉の上で、幼虫が並んで押し合いへし合いしながら、その葉をモリモリと食べていることでしょう。
怖い物見たさの好奇心が湧くかもしれませんが、近所のツバキの木に無防備に近寄ってはいけません。まずはこのコラムを最後まで読んで、チャドクガがどれほど恐ろしい生物かを学んでください。
有毒の毛が約30万本
チャドクガの幼虫の体には、肉眼でも見える白く長い毛がありますが、これには毒はありません。人に害を与えるのは、背中にボツボツと見える黒い部分に群生する 毒針毛 と呼ばれる有毒の毛です。長さ約0.1mmと微細で肉眼ではほとんど見えませんが、その数なんと1匹あたり約30万本!
この毒針毛はわずかな摩擦で抜け落ちるので、人の皮膚が触れれば、そのまま付着し、少しずつ突き刺さります。また、衣類に触れても、毒針毛が抜けて表面に付きます。暑くて脱いだジャケットを近くの木の枝に引っかけておいたら、知らぬ間にたっぷりと毒針毛がくっついていた――といったことがよくあるのです。そのジャケットを着たり脱いだりすれば、大量の毒針毛が皮膚に刺さるのは容易に想像できるでしょう。
1 / 5
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。