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2040年頃にかけて増える高齢者…介護保険制度 見直し議論が本格化へ 利用者負担引き上げか

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 介護保険制度見直しに向けた議論が、厚生労働省の社会保障審議会の部会で年末にかけて本格化する。高齢化で、介護を必要とする人が増えるのに伴い、介護費用は増加の一途をたどっている。将来にわたって制度を持続させるため、利用者負担の引き上げや、サービス給付の抑制といった“痛み”を伴う改革の行方が焦点となる。(野島正徳)

自己負担割合は

介護保険制度 見直し議論が本格化へ 負担拡大、給付抑制…「痛み」伴う改革

 介護保険制度のサービス利用者の自己負担割合は原則1割だが、一定以上の収入がある場合は2割、または3割の負担を求めている。財源を安定させ、持続可能な制度にするため、自己負担割合を高めるべきだ、との意見が出ており、今回の見直し議論でも焦点となる見込みだ。

 介護保険制度がスタートしてしばらくは、自己負担は一律1割だった。しかし、介護を必要とする高齢者が増え、介護費用も増大していることから、2015年から年収が一定金額(単身者は280万円、夫婦世帯は346万円など)以上ある人は2割負担となった。さらに、18年からは、現役世代並みの年収(単身者は340万円以上、夫婦世帯は463万円以上)がある人は3割負担となった。

 ただ、高齢者の多くは収入を年金に頼っており、2、3割負担は合わせて10%未満と少数派だ。2割以上の負担が求められるのは、高齢者全体の所得上位20%にすぎない事情がある。

 一方、原則1割となっている後期高齢者の医療費窓口負担は今年10月以降、一定額以上の収入のある人(単身で年収200万円以上など)に2割負担を求める制度改正が行われた。すでに3割負担している人と合わせ、後期高齢者全体の所得上位30%と、介護よりも対象範囲が広い。

 財務省の財政制度等審議会(財政審)からは、介護サービスについても、所得や資産などに応じて自己負担の割合を見直す必要があるとして、「原則2割とすることや、2割負担の対象を拡大すること」を検討するべきだとの注文が付いた。

 経済界からも、「現役世代にこれ以上の負担を強いれば、消費の落ち込みによって経済全体への悪い影響が懸念される」として、余裕のある高齢者には、より多くの負担を求めていくべきだとの意見が出ている。

 これに対し、介護関連の団体からは、「利用者に負担増を求める前に、国などが現場の生産性向上を支援し、無駄をなくすことで介護費用を抑えるなど、努力できることがあるはずだ」などと反対する声もある。

介護計画有料化は

 ケアプラン(介護計画)の作成は、介護が必要になった高齢者と介護サービスをつなぐ、最初の入り口と言える。相談しやすい環境を整えるため、ケアプラン作成については利用者に負担を求めず、全額を公費などで賄うという例外的な取り扱いになっている。

 ただ、創設から20年以上を経て介護保険制度が社会に定着したことを踏まえ、有料化を求める意見が出ている。

 財政審は、「利用者が自己負担を通じてケアプランへの関心を高めることで、ケアマネジャーが提供するサービスに対するチェックが働き、質の向上にもつながる」といった見解を示している。

 有識者の間でも、「介護サービスに対する国民の理解は進んでおり、介護費用が増大する中で、ケアプラン作成を例外とする必要はなくなった」と支持する意見がある。

 これに対し、介護の現場からは「介護サービスを受けるための入り口で、新たな負担が生じれば、心理的なハードルが上がって利用控えを招くことが懸念される」として、有料化に慎重な対応を求める声が上がっている。

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