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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

「がん放置療法」の近藤誠氏死去…医者に言われるままの医療に一石

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 がんが見つかったら手術や抗がん剤治療を行うのが医療界の常識という中で、著書「患者よ、がんと闘うな」(1996年)などでがんの放置を主張してきた医師の近藤誠氏が亡くなりました。自ら開設した「セカンドオピニオン外来」(近藤誠がん研究所)に向かう途中のタクシーで具合が悪くなり、病院に搬送されましたが、そのまま帰らぬ人となったと聞きました。死因は虚血性心不全で享年73歳。まだ、死ぬには若すぎます。

老いを感じていても元気、突然の死

「がん放置療法」の近藤誠氏死去…理論は色あせたが、医者に言われるままの医療に一石

近藤誠氏(2013年撮影)

 私は前立腺がんがあり、昨年、彼の事務所を訪ねたおり、さまざまな話をしたことが思い出されます。まさか、それが最後になるとは思いませんでした。私たちは同世代で、「いつ死が来るかわかりませんね」と言い交わし、延命治療のばかばかしさについて語り合いました。彼は元気そうだったので、突然の死を聞いた時、「交通事故にでも遭ったのか」と思ったほどです。

 70歳を超えると、どんな人間も死期を意識します。私の場合は、50代後半から、狭心症や糖尿病を発症し、最近では前立腺がんも発見されたので、いやがおうにも死を考え思いながら生きています。幸い、まだ日常生活に支障をきたすことはありません。近藤氏も老いは感じていたようですが、十分に元気でした。ですから、私ほどには死を意識していなかったと思います。それを思うと、本当に心が痛みます。

理想的な死に方かも

 ただ、発作を起こしてそのまま逝くというのは、日本の終末期治療の現状に疑問を感じている私たちにとって、理想的な死に方です。体に障害が残り、胃ろうを付ける、人工呼吸器に繋がれる、透析を受けるといったことで生き続けることは、単に死を先延ばしにすることのように感じているからです。ただ、突然の死は、ご家族や仕事の関係者にとっては、心理的にも後のことも大変だろうと思います。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。前新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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