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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

お母さんを亡くした不登校の女子高生を救ったバーチャルYouTuberの言葉

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お母さんを亡くした不登校の女子高生を救ったバーチャルYouTuberの言葉

 子どもたちにとって、自分が頼っていた親が突然亡くなってしまうことは、大人が想像する以上に衝撃的なできごとに違いありません。心に受けた大きなダメージから回復するためには周りの人たちの支えが不可欠で、相当の時間を要します。今回は、お母さんを交通事故で失った女子高生の心の回復過程をご紹介します。

同級生が「キモい」「ウザい」と陰口

 杏奈さん(仮名)は、お父さんとお母さんとの3人家族で、近くに母方のおばあちゃんが住んでいます。

 小学校時代からおとなしく、親の言いつけを必ず守る子でした。そんな杏奈さんは、中学校入学後から同級生に「キモい」「ウザい」などと陰口を言われているように感じるようになりました。それがつらくて学校も休み出し、リストカットもするようになりました。そのため、中学2年の3学期にお母さんと一緒に思春期外来を受診しています。

 初診時、杏奈さんはうつむいたままで質問にはほとんど答えてくれませんでした。お母さんがこれまでの経過について話してくれましたが、「過保護に育ててきたのかもしれない」と述べていました。周囲への過敏さを伴った不登校ということで、2週間に1度の割合で通院を開始することにして、少量の精神安定剤も飲んでもらうことになりました。

 しかし、通院開始後も杏奈さんは安定することはありませんでした。不登校が続き、自宅にあった風邪薬を大量に飲んだり、手首を自傷したりしました。そのため、何度か精神科に入院しています。

 中学3年の後半になると、杏奈さんは保健室登校を続けることができるようになり、中学校を無事に卒業しました。その後、全日制高校に入学し、当初はがんばって登校していましたが、高校1年の5月の連休明けから学校を休み出すようになりました。そのため、毎朝、お母さんが車で学校へ送っていました。

学校に送ってもらう車が電柱に衝突 母が即死

 高校1年の7月の夏休み直前、その日も朝、お母さんの車で学校へ向かいました。その途中で、杏奈さんとお母さんが乗っていた車がカーブを曲がりきれず、道路脇の電柱にぶつかり、車は大破しました。お母さんは即死で、杏奈さんは奇跡的にかすり傷だけで命に別状はありませんでした。

 お母さんの葬儀の席で杏奈さんは泣き続けました。当然、事故後は登校もできなくなりました。診察室では、「お母さんのことを毎日思い出して、つらくなる」と言って泣くことを繰り返しました。現在の学校を続けることは難しいということで、夏休み明けから休学することにしました。

 診察室での杏奈さんは、「お母さんは、私のせいで事故に遭って死んだんです。私が不登校にならず、自分で登校できていたら、事故には遭わなかった。私も早くお母さんの元に行きたい」と言って泣き出しました。

 お父さんとおばあちゃんは、杏奈さんを非常に気づかい、やさしく接して、杏奈さんの話を聞き続けました。また、休学していましたが、学校の担任の先生が時々家庭訪問して杏奈さんと会って、杏奈さんが語るお母さんの話を聞いてくれました。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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