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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

川の事故が今年も多発…知っておきたい「子どもが溺れる11のパターン」

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 今年も各地で、川で溺れたというニュースがありますね。ほとんどのニュースは下記のような内容です。

 「〇月〇日、午後○時ごろ、○○市の○○川で、子どもが溺れたと付近にいた人から警察に通報がありました。警察によりますと、救助されたのは○歳の男の子とみられ、病院に搬送されましたが、意識不明の重体です。警察が詳しい状況を調べています」

 これだけの情報では、どういう状況で溺れたのか、予防するためにはどうしたらいいのかを知ることはできません。

今年も多発する川の事故…子どもが溺れる11のパターンとは

イラスト:高橋まや

琵琶湖、長良川、多摩川、相模川、木曽川…

 公益財団法人「河川財団」により、2003年から21年までに新聞やテレビ等の媒体で報道された水難事故(河川、ダム・湖沼、ため池、用水路、運河など)にあった4955人について分析が行われました。今回は、このデータ を中心にお話しします。

 水難事故の発生件数が多いのは、大都市圏、あるいは地方の中核都市からのアクセスが良く、レクリエーションやレジャーの場としてよく利用されている場所です。最も多いのは琵琶湖、続いて長良川、多摩川、相模川、木曽川の順となっていました。

 調査した期間中の約10年間に、ほぼ同じ場所で死亡事故が3件以上発生している「水難事故多発地点」は、日本全国で40か所。川遊びやバーベキュー等でよく利用される中流域や上流域のキャンプ場などの付近が大半でした。

 川遊びや釣り、ボートなど川に立ち入る行動をしていた水難者は約61%。一方、キャンプ・バーベキューなど陸域での活動中の水難者も約31%を占めました。水難事故というと川など水の中だけのことと思うかもしれませんが、河岸などから転落する例などが見受けられるのです。

 河川財団では、全国の川の体験活動の指導者から水辺での「ひやりはっと」の事例(2304件)を収集しており、それによると「滑る」が第1位、第2位は「流される・足をすくわれる」、第3位は「落ちる・崩れる」でした。

子どもの水難事故のパターン

 この「河川財団」の資料では、子どもの水難事故の事例を11のパターンに分けています。どういうときに事故にあっているかが良くわかります。

  • 〈1〉ひとりで遊んでいて河岸から転落したケース
  • 〈2〉川遊びで低水路や流れに立ち入り、深みにはまって溺れたケース
  • 〈3〉川遊びで流れに立ち入り、速い流れに流されて溺れたケース
  • 〈4〉落としたボールやサンダルなどを拾おうとして溺れたケース
  • 〈5〉溺れた弟や妹を助けようとして二次災害を併発したケース
  • 〈6〉急な増水で中州などに取り残されたケース
  • 〈7〉増水時に川遊びをして溺れたケース
  • 〈8〉比較的大きな川を泳いだり歩いたりして対岸に渡ろうとして溺れたケース
  • 〈9〉河口付近で川遊びや遊泳をして海に流されたケース
  • 〈10〉滝や 堰堤(えんてい) で飛び込み遊びをして溺れたケース
  • 〈11〉家族や大人と一緒に川を訪れたものの大人と別行動し、子どもだけで川に立ち入って溺れたケース

 〈1〉から〈5〉までのパターンは、幼児や小学生によくみられます。〈6〉から〈10〉までのパターンは、中学生に多くみられます。幼児や小学校低学年では河岸から転落して溺れることが多く、一人で遊んでいて転落した場合には初期対応や救助活動ができず、死亡につながることが多くなります。中学生では、川遊びや遊泳中の事故が増加し、危険箇所や増水時の川遊びで溺れることが多くなります。

 〈4〉「落としたボールやサンダルなどを拾おうとして溺れたケース」の事故を予防しようと、NPO法人「AQUAkids safety project」では「サンダルバイバイおやこ条約」という提案を行っています。子どものサンダルが流され、拾おうとして溺れてしまうことを予防するため、「サンダルが流されても、拾いに行かない。サンダルが流されてしまっても、お母さんは子どもを叱らない」という約束をする啓発活動です。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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